幻のカット部分大公開!
訳者あとがきでも触れているように、『悪趣味映画作法』の初版(Delta版)と新版(Thunder's Mouse版)のあいだにはいくつか異同があります。初版の一部が削除されているのです。邦訳は新版によったのでこの部分は読めないのですが、今回特別にその部分を訳してしまいました。邦訳のどこに入るかも合わせて記しておきましたので、プリントアウトして切り取って貼りこむとかしてくださいませ。
第6章 〈裁判のすべて〉
P.183 l.14の後
マンソン一味への関心は尽きなかったので、一九七八年にレスリー・ヴァン・ホーテンがラビアンカ夫妻殺人事件で二度目の再審を受けることになったときは、当然ながらすぐLAへ飛んだ。しかし法廷には誰もおらず、ぼくは打ちのめされた。裁判にかけつけるくらい彼らのことを気にかけているのは、世の中でぼくただ一人だったのだ。みんな、そんなに早く忘れてしまえるんだろうか? 被告席から十センチも離れていない最前列にたった一人で座ると、レスリーの弁護士は胡散臭そうにこっちを見た。彼はクライアントに尋ねた。「あの男、知り合い?」マンソンの狂気から解き放たれてひさしいレスリーはこっちに振り向き、ぼくらははじめて目と目を合わせた。感激のあまり、思わず結婚を申し込もうかと思ったくらいだ。レスリーはぼくの熱烈なる視線から目をほどき、弁護士の方を向いて、肩をすくめた。「いいえ」
P.184 l.14の後
キャサリン・ハーストはいつも堂々たる押し出しであらわれ、その日誰がヘアセットをしたのかは大いにゴシップ種になった。彼女はよく傍聴席に向かってしかめっ面をしてみせた。ぼくらを人間のクズだと思っているのはあきらかだった。パティのグルーピーの方もハースト夫人を嫌っており、聞こえよがしにペチュニア・ピッグと呼ぶこともあった。
P.188 l.16の後
パティ・ハーストは戦略的あやまちをおかした。地味すぎ、真っ当すぎて、誰が見ても自分で選んだわけがないとわかる服を着てきたのだ。『サニーブルック・ファームのレベッカ』的イメージをふりまいても、証言は胡散くさく見えるばかりだった。
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Kiichiro Yanashita / 柳下毅一郎 / yanasita@gol.com