コンピュータ・コネクション(9/10)


ホットなトロント子

●ぴーがーきーっぴろぴろぴろ ああこの音がこんなに懐かしいものだとは。ついにコンピュータにつながって電脳人間第一号となったぼくはサイバー・スペースを縦横無尽に駆けまわり、思わず日記巡礼などをしているのだった。思いっきり日常だなあ。
 実はこのホテルにはモデムをつなげる部屋がふたつあったのだ。その内のひとつが今日になってようやく開いたので、部屋を替えてもらったという次第。しかし入ってびっくり、20人くらい座れる立派な会議室じゃないかい。なんか異様に場違いだが、そんなことはこの際問題にならーん。

●日曜日なのでお店はどこも閉まってる。こういうときにはクリスチャンのいないところへ行くに限るね。中華街でもいいんだが、今日はリトル・インディアだ。ダウンタウンからは地下鉄とバスを乗り継いで30分足らずのところにある。着いたのは11:15。ちょっと早く来すぎてしまったので映画館のホットな看板を眺めたりするうちに店が開きはじめる。取りあえずインド飯屋に入って腹ごしらえ。ここらはみんなビュッフェ形式みたい。カレー4種類くらい+タンドリ2種類くらい+アルファで500円弱かな。トロントは物価が高いのである。
 謎のインド・スーパーでインド映画のビデオを買い、また地下鉄を乗り継いでダウンタウンに戻ってくる。と、ワイアード部屋が空いてるじゃないですか! つうわけで最初に続く。

●トロントの名所のひとつ、World's Biggest Bookstoreに行く。名前を聞くとすごそうだけど、近くには「世界一のジーンズ・ショップ」があるというくらいで、まあお題目であろう。しかし、確かにだだっぴろい店ではあるし、こういう店には珍しくポルノ雑誌まで置いてある。ポルノ・ショップには入りずらくて……という方は利用されたし。とは言っても、トロントはポルノ・ショップも妙に開放的だ。本当に妙なものは置いてない(輸入できない)せいかもしれない。こういうところは日本と似てるかも。
 映画祭に来ていると、なんとなく映画祭以外の映画は見てはいけないような気がしてくるんだが、今回は何のオブリゲーションもないし、所詮は一民間人だから他のも見る。どうせヒマだし。地下鉄を一駅分歩いて、7:15からCollege駅近くの映画館でトッド・ヘインズ(『ポイズン』)の新作、『SAFE』を見る。胸が締め付けられそうになるほど恐ろしい。ジュリアン・ムーア(『ショート・カッツ』で陰毛丸だしだった人ね)演じるはLA郊外で何不自由なく暮らす有閑主婦。なのだが、なぜか理由もわからぬ不安感にかられて、体に変調をきたしはじめる。漠とした不安に襲われる描写がすばらしくうまい。特にトラックの排気ガスを(ウィンドウは閉めてるのに)吸い込んで、喘息の発作を起こすところ。テーマ的に似てるんで、どうも『ショート・カッツ』のことを思い出してしまうが、こっちの方が百万倍うまいね。こいつはきっと公開されるでしょう。

●12:00からまたミッドナイト・ショーで『唖の目撃者』。モスクワで低予算スリラーを作っている特殊メイク係の女の子(口がきけない)が、スナッフ・フィルムの撮影現場を目撃して逃げ回ることになる。『XYZマーダーズ』+『F/X』+『暗くなるまで待って』かな。テクはあるけど、何も言うことはないというタイプの監督らしい。でもぼくはスプラッター/ショッカーは差別しているので、別にそれはそれでかまいません。
 口がきけないので、悲鳴を上げられないヒロイン(たぶん英語が喋れないのでそうしたのだ)はなかなかキュートだった。英語で記事を書くとしたら、"Unscreaming Queen"とでもタイトルをつけるところ。


Kiichiro Yanashita / 柳下毅一郎 /garth@cap.bekkoame.or.jp