リッチと同い年
◎今月のお仕事 『コリン・マッケンジー物語』(デレク・スミシー パンドラ)発売中。特殊翻訳稼業の神髄を見せてやるぜ。
10/1(金)
『Complete Charles Manson』(白夜書房)送ってくる。
夜、九段下のイタリア文化会館でアントニオーニの『椿を持たない婦人』見る。53年作品で、もうメロメロのメロドラマである。このころって、まだ主人公の不安の対象がはっきりしてるんだよね。これでまた「アントニオーニは(人生について深い洞察があるというよりは)なんとなく暗いだけである」というぼくのテーゼが証明された。ような気がする。
ルチア・ボーゼは良かった。不幸な女はそそるなあ(笑)。
10/2(土)
神保町で『「フリークス」を作った男』(スカル他 水声社)買う。
洋泉社に寄って町山としばし密談。世界はラス・メイヤーとパメラ・アンダーソンのあいだで回っているという話。それにしても反シリコン派に転向して胸に入っていたものを全部抜いたパメラ・アンダーソンはフェミニストのアイドルとなっているというんだが、世の中そんなことでいいんだろうか? つうか、フェミニストの人ってそれでいいの? いやリンダ・ラヴレイスのときもそう思いましたが。
田野辺くんが復帰して、さっそく秘宝をヘルプしていたが、あまりやらない方が……いや田野辺くんの力を借りたくなるのはわかるんだが。
その後馬場。青い光の出てくるSF、とかそういう話。あと『カムナビ』。「下書きとしか思えない」とか言う人もいたけど、そういう忌憚のない発言こそが求められているのではないのだろうか。違いますかそうですか。
10/4(月)
ちょっと必要があって秋葉原に出かけ、『MATRIX』のDVDを購入、で、ひみつの機械につないで実験。成功成功。
10/5(火)
渋谷で食事する。特に名を出してくれと要望があったフリー編集者のTほか。東急文化会館で待ち合わせだったんだけど、お約束のボケをかまして東急プラザに行ってしまいました。話の内容は……太木さんの地獄日記とか(笑)。「邪悪リーダー」の正体まで知ってしまいましたが、知ったからと言ってどうということはないのであった。なんか日記のヘビーリーダーの人と話をすると、こっちも忘れているような昔話をふられたりして面白い。
10/6(水)
2000円札ってさ……いや思うんだけど、オブチって本当に気楽な人生送ってるよね。
池袋のコミュニティ・カレッジに出かける。なぜか講座を持つことになってしまったのだった。先生と呼ばれるほどの馬鹿じゃなし、なんてね。思うに、ぼくはどうも説教癖があるのか、ああいうところに行くとどうも長々と講義してしまうのだった。本当はセミナーにすべきだったのになあ、とか終わってから思う。あとの祭りだが、なんか金取ってるとサービスしなきゃいけないって気になるしなあ。なお、この講座はあと二回やって終了。来年以降は未定(オレ、別に金いらないんだけど、セミナーみたいなことやるのは好きなんだよなあ。みんなで裁判見に行くとか、殺人現場まわるとか、そういうのできないもんだろうか)。
10/7(木)
久しぶりに試写。松竹で『200本のたばこ』見る。典型的なサンダンス映画。サンダンス映画とはぼくの造語だが、ようするに20サムシングだか30サムシングだかの男女6、7人がくっついたり別れたり諍ったり和解したりするだけの低予算映画だ。最近は懐メロとかオルタナ系サントラとか付加価値がつくようになってきた。この手の映画ってすっごくむかつくんだけど、今日、その理由がわかった。要するに自意識過剰なんだよな、こいつら。自分のちっぽけな痛みが、映画にして世に問うに足るもんだと脳天気に信じていられることに腹が立つのだ。
ところで、この映画は1981年の大晦日が舞台なんだけど、つうことはぼくはこの映画のクリスティーナ・リッチと同い年ってことになる。いやそりゃまあなんと申しますか……
その後渋谷パンテオンで『ワイルド・ワイルド・ウェスト』……もーどーでもいいや(投げやリ)。なんせジョン・ピーターズ製作作品だしね。なんか大学生のSFファンが3人くらい寄ってした馬鹿話をなんの脈絡もなくそのままつなげた、みたいな話。どうでもいいよ。なんせピーターズにはアシスタントが二人ついていて、そのうち一人はエグゼクティヴ・アシスタント、つまりアシスタントに命令するのが役目のアシスタントなのだ。勝手にしてくれって感じ。
終わったあと、PSCのI、大林千茱萸と飯を食って、オレゴンのアレックス・コックス邸訪問話などを聞く。あとナパ・ヴァレーのコッポラ・ワイナリー。それにしてもコッポラは情けないぞって話とかね(笑)。
10/8(金)
アルトマンの新作『クッキー・フォーチュン』見る。なんか、小話みたいな映画だった。ちょっと『ウェディング』ぽい。しかしリヴ・タイラーとクリス・オドネルのリアル・ホワイト・トラッシュ馬鹿ップルはいい感じでしたな。リヴ・タイラーぶくぶく太ってたけど。
最後の方、なんか演出と脚本の意図が食い違ってるような気がした。どんなものかな。終わってからTとお茶して『ラスベガスをやっつけろ!』のビデオをわたし、『アイズ・ワイド・シャット』の話などする。そう言えばキネ旬のフィルム・メーカーズの新刊、キューブリック特集に巽孝之&小谷真理夫婦の『アイズ・ワイド』対談が載っているというので期待して読んだんだが、全然ダメだった。パンツ脱いでないんだもん。パンツ脱げ、パンツ。
夜、〈CREA〉の編集者から人をナメた電話がかかってきて、血管がぶち切れそうなくらい怒る。すまねえ町山、また世界を狭くしちまったぜ。
10/9(土)
神保町で會津信吾氏と待ち合わせ。犯罪講座のゲストを頼むんで、その話をする。とは言ってもその話はすぐに済んだんで、あとはクズ映画の話とかいろいろでたらめに雑談していました。會津さんはなぜかジョージ・ストーヴァー(ドン・ダラーとジョン・ウォーターズの映画両方に出演しているボルチモアのセミプロ俳優)と友達なんだそうで、なんかそういう話。
その後、ちょっと洋泉社を表敬訪問する。つうか末期状態に突入しつつある編集部を陣中見舞い。田野辺くんは昨日『(特に名を秘すが、そう、あの映画です)』を見たとかですっかり世界に蔓延する悪意に当てられてしまっているのだった。「ぶりかえしてしまった」とか言っている。
三和出版のウッチーが「全国唯一の医者マニア誌」こと『カルテ通信』を送ってきてくれた。こりゃあ狭いなあ。無茶苦茶笑えるが、もうちょっと本物の医学論文とか入れるといいと思う。ちょっとポルノ雑誌っぽすぎて、体験告白が本物に見えないのである。
夜、サッカー五輪予選VSカザフスタン 点を取られそうな気はまったくしないが取れそうな感じもないというちっとも盛り上がらない試合だったが中田の体力で押し切った感じ。ま、これで三連勝して最終戦は消化試合になると見た。
10/10(日)
祖師谷に出かける。以前から懇意にしていただいている自主オペラ映画監督・帯谷有理氏から焼き肉のお誘いがあったので。なんでも『厭世フフ』のヒロインの子が関西から上京してくるとかいうことがあったらしく、出演者が集まって打ち上げとなったわけ。で、中でピアノを弾いてる(だけ)の妻もお呼ばれしたのだ。
で、口から出てきそうなほど食べ、その後帯谷さんの家まで行って本棚チェックしたりとか。でも声楽者だけあってCD関係が凄かったが。
10/11(月)
なんかゴロゴロしてたら終わってしまった。しょうがねえな。
10/12(火)
ヘラルドの会議室で滝本誠(オヤジ)と対談。『ワイルド・アット・ハート』の続編『ペルディータ』のパンフに載るはずのものである。で、開口一番「いやあ、女優がもうちょっとなんとかなればなあ」(笑)。一発で結論が出てしまった。そのまま二人でうだうだと2時間ほどしゃべる。
10/13(水)
ところで水曜日と言えばサッカー雑誌の発売日である。監督が誰になっても反代表監督を貫きつづける『ダイジェスト』は相変わらずヒステリックにトルシエ叩きを続けてるんだが、しかしオリンピック代表は勝ちつづけてるもんでもうただの人格攻撃になってる。どうにかならんのか、これ。でも、『マガジン』はって言うと、こっちはどうもレイアウト的に好きになれないんだよなあ。誌面デザインにメリハリがなくて、平坦な感じがしちゃうのである。記事はいいんだけどね。
コミカレ授業は二回目。今日はエド・ゲインのお話で、みんな知ってるような話をする。すみません。
10/14(木)
『ラスベガス'71』(ハンター・トンプソン ロッキング・オン社)送ってくる。ありがとう山形くん。あと『ハートブレイカー』(ロバート・フェリーニョ アーティストハウス)のプルーフも。これ売れるかな(売ってはいけません)。
近所の茶店で必死こいて仕事してたら、いきなりどしゃぶりになってお約束のようにずぶ濡れ。
夜、銀座に出かける。ヘラルドのTから呼び出しがあって、いつものごとく麻雀なのだった。メンバーもいつもと同じ、キネカ大森のHとPSCのI。会社につくと「みなさん、お待ちかねですよー」とか言われてなんか嫌な感じかも(笑)。
朝まで半チャン6回打ってトップ2回。点棒はそこそこだったけど、チップをがっぽり稼いだんでそこそこでした。帰宅6時。
10/15(金)
今日は朝10時から四本映画を見るつもりだった。しかし起きたのは午後3時(笑)(通常、試写は1時と3時の一日二回である)。いくらなんでも一本ぐらいは……と思って渋谷のシネカノン試写室へ。噂の韓国映画『シュリ』を見る。北朝鮮の工作員が南に潜入して和平ムードをぶち壊すテロを計画するというアクション映画。
冒頭の北の工作員養成場面がすごかったなー、いや、さすが犬食ってる民族は違う。もう全編血塗れの超スプラッタであった。これがヒットしたのは、北のテロリストの主張が観客にもある程度理解できるものだからだろう。実際、「おまえらコーラとハンバーガー食って育った人間には、北の人民の苦しみなんかわからん!」と罵倒された主人公は、何もこたえられず黙ってしまうのである。
図書館で借りてきた『屋根裏に誰かいるんですよ』(春日武彦 河出書房新社)読む。この本の執筆の動機は、屋根裏に間男を住まわせていた主婦の話だという。本の中で、著者は「九分九厘都市伝説だろう」と書いているんだが、この話、ぼくも聞いたことがある。どこで読んだんだったか、と思って本をひっくり返してみたが、残念ながら発見できず(たぶんコリン・ウィルソンだと思うんだが)。でも、そのかわりに他人の屋根裏に入りこんで暮らしていた男の話を見つけた。名前をセオドア・コニーズという(『アメリカ畸人伝』カール・シファキス 青土社)。
コニーズは1941年、物乞いのため旧知の友人宅を訪れた。ところがその日たまたま家の主は留守にしていたのである。これさいわいと家に入りこんだコニーズは「葉巻の箱の蓋の二倍半」ほどの跳ねあげ戸から使われていない屋根裏スペースに入りこんだ。そのままそこに住みついて、家人の留守を見計らっては下に降りて古着をかっぱらったり、残り物を食ったりして生活していた。ところが、一月ほどしたある日、コニーズは主人と出くわし、驚いて相手を殺してしまうのである。
警察も屋根裏スペースに人が入れるなどとは思わず、捜査で見逃されてしまったので、コニーズはそのまま居座りつづけた。家に戻ってきた未亡人は天井裏で妙な物音がするのに怯え、家を出ていってしまった。コニーズはそのまま屋根裏に住みつづけ、家は幽霊屋敷として有名になってしまったのだと。
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Kiichiro Yanashita /
柳下毅一郎 / yanasita@gol.com