神様の愛い奴たち

◎今月のお仕事 大森望、會川昇と怪獣鼎談(『SFマガジン』98/9)         


7/31(金)
 時差ボケが抜けず、3時起床。

 なんかメールが来ていた。

 う〜ん、そんなこと言ってもやっぱ「Titanic」いいですよー。あれほどのロングランと興業収入を記録しているのがすべてを物語っています。世界中、よほどのヒネクレモノ以外はやっぱ「面白い、いい映画」という見解ですよ。
 確かにあなたの主張するように作られていないのは事実ですが、もし、あなたの「こうあって欲しいという通りに」作られていたら「Titanic」はこれほどまでにヒットしていないどころか、少数の人にはバカ受けでも「エンタテイメント」的に言えば失敗作となっていたでしょう、おそらく。
 要するに、あなたの批評の観点は全くナンセンス。全然駄目ですね。
 エンタテイメント作品なんだからエンタテイメント的観点で批評しましょうよ。

 同様2通。たぶんこれを読んでの感想なのだろうが、『タイタニック』についてだけはこういうメールが引きもきらない。もっと手ひどく痛めつけている映画はいくらもあるはずなんだが。まあ度しがたいとしか言いようがないんで、コメントはしません。たぶん知らないだろうと思うけど、『LA Times』には酷評が載り、偏執狂のキャメロンが「おまえら批評家はアホばかりだ」と投書欄に投稿したんだよ。「観客はオレの味方だ」とか言ってね。耳触りのいい評だけ読みたいなら、『キネ旬』でも読んでいなさい。

 渋谷で秘宝の田野辺くんから『愛は死より冷たい』のゲラ受け取る。その後大阪よりフジロックフェスinトーキョーのために来日した幼なじみと飯を食うも、時差ボケのため途中でダウン。済まぬ。


8/1(土)
 朝5時起床。校正をちんたらやる。

 久しぶりにユタへ出かけてMtGやったり。つい気分でバーンデッキを使ってみたりしましたが、やっぱ性に合わんわ。大森望とちょっとトレードし、有用なカードを供出して役たたずのカードを引き取る(笑)。Intruder Alarmとか。あとはLAの話など。


8/2(日)
 葛西臨海公園へ。日曜日に水族館なんか行きたくなかったんだが、妻の友人がボランティアをやってるとかいうので、まあちょうどいい機会だと思って見に行った。なんかどの魚を見ても「うーん、旨そうだ」の感想しか浮かんでこないのだった。マグロがメタリックで格好良かったなあ。

 夜、TVKで『狙われた女』。音楽教師のエスター・ウィリアムズが生徒からストーキングされる話。原作ロザリンド・ラッセルというんだが、これってやっぱり個人的経験に基づいているのか?


8/3(月)
 大森望に誘われて、江東区の花火大会見物に江戸川区まで出かける。川の対岸から見るわけ。といっても30分ほど終わってしまう軽い花火だった。立ち見。ちょうど花火が終わったあたりで雨が降り出すという見事なタイミング。

 その後大森邸で64とマジック、といういつもの姿。シールド戦は引きが弱々でどうにもならん。飛行クリーチャーに徹底的に蹂躙される日々。


8/5(水)
 1時。ユニジャパンで『ミル・マスカラス/愛と宿命のルチャ』。ミル・マルカラス主演のプロレス映画なんだが、わりと真面目でがっかり。ぼくとしては、やっぱりゾンビや宇宙人と闘う映画の方が良かったなあ。と言いつつ意味があるのかないのか全然わからないカットがばんばん入っているあたりがメキシコ映画で好感が持てる。しかし、そういうこととは別にこの映画は必見、というのはなんと映画の中でマスカラスが素顔を見せているからなのだ! でも、どれがそれかを指摘するとルチャの刺客に消されるらしいので内緒です。

 3時半からウディ・アレンの新作で『地球は女でまわってる』。女と見たら手当たり次第な性格破綻者である作家のお話。これ、なんのアイロニーもなく自分自身の話だからなあ、とんでもねえよなあ。で、「ぼくは性格破綻でどうしようもないダメ人間なんだ」ってこぼすと、自作の登場人物が「でも、あなたには文才があるわ」って言ってくれるわけ。まあ、他にそう言ってくれる人はどこにもいないしね。もう『ワイルドマン・ブルース』と合わせて映評を書け、と言われてるようなもんだな。
 試写室は女だらけでびっくり。なんですか、若い女の人はこういう自己弁護だけが得意な自己憐憫の強いチビでハゲな助平オヤジとか好きなんですか? そういうことなら言っていただければ、チビでハゲの部分以外ならぼくでも対応できると思うんですが。中に一人、ものすごく前髪を立てているおばさんがいて、ぼくの二列前に座っていたのに、画面にその前髪がかかっていた! 映画館ではよくある話だが、試写室でこんな目に遭ったのははじめてである。後で話を聞いたが、元芸能レポーターの映画ライターらしい、とのこと。もう映画ライターって業界の吹き溜まりになってるね、トホホ。


8/6(木)
 水野先生のページを発見。更新が待ち遠しいぜ! もちろん『シベ超』のページもあるよん。

 午後、フランスの大学で映画学を教えているところのStephenが夏休みで日本に来ているのでお茶しに行く。なんかフランスのアジアン・トラッシュ映画雑誌(でもデザインはお洒落)のために映画監督にインタビューしたい、ということでいろいろインタビューしているとか。ぼくも何人か紹介した。福井ショウジンとか。で、最近の映画の話に興じる。でもちょっとアート系なんであんまり趣味は合わないの。


8/7(金)
 3時半からウィリアム・クラインの『ミスター・フリーダム』。アメリカからアカと闘って自由を広めるためにやってきたスーパーヒーロー、ミスター・フリーダムの大活躍! といっても68年のフランス映画だからボコボコにされるに決まってるんだよーん。そのセクシー秘書をデルフィーヌ・セイリグがやっているんだが、ぼくはどうもこういうのに弱い。インテリ左翼女がバカな役で無理矢理セクシーを振りまいたりするとイチコロである。なぜでしょう? 誰か分析してください。

 6時から『CUBE』。カナダのインディペンデントなSF映画。なんか『プリズナーNo.6』だなあ、と思ったら、プレスで江戸木が同じことを言っていた。つうか、『リスの檻』ですか? なんにしてもいまどきニューウェーヴ。

『ドラゴン・ティアーズ』(ディーン・クーンツ 新潮文庫 白石朗訳)。翻訳の勉強のために読んだ(笑)。でも本当にクーンツってつまらないねえ。というか、どうしてみんなこんな本を面白がって読むのだろう? 100ページくらい読んだら落ちまで全部わかっちゃうんだけど、ひょっとしてそれがいいのかな? しかし、読書にまで安心を求めて、人生何が楽しいんだかねえ。かなり強烈な反ドラッグ保守反動小説で、その点でも大いにむかついた。


8/8(土)
 3時。新宿歌舞伎町のロフト・プラスワンで『神様の愛い奴』を見る。神軍平等兵・奥崎謙三主演のAVで、監督役を根本敬画伯が神様からおおせつかったという代物。一応映画評論家などという商売をやっていると、あの映画がいいの、この映画はダメだなどとしょっちゅう言っているわけですが、小さいね、そんなことは。所詮映画館でかかっている映画なんか相対的なもんでしかない、としみじみ思い知りました。本当の異物はそんなものじゃないんだね。というわけで今年のベストに決まり。それにしてもあの奥崎にあれだけのことをやらせてしまう根本敬の猿回し芸の天才ぶりには本当に瞠目である。

 衝撃さめやらぬなか、銀座で大森望と待ち合わせてトレードとデュエルをちょっと。5Cスリヴァーデッキを作ってみる。Mox一枚しかない割には結構回っていて、こりゃ強いのはわかるね。でも相手が全然対策してないからなあ。6時半から推理作家協会賞を受賞した風間賢二先生を囲む会。白石朗、本阿弥さやかほか総勢8名。なんか裁判やら匿名座談会やらをサカナに爆弾発言が多数飛び交ったような気もしますが、オラ何も覚えてねえだよ。「クーンツの最高傑作は『デモン・シード』だ!」と放言したら本阿弥さまが同意の言葉をくださったのには驚きました(笑)。


8/9(日)
 根本特殊漫画大統領に電話。根本さんは今回上映されたバージョンの編集には実はご不満であった! あれでは甘すぎるんだって(笑)。「オレが奥崎にかかわって、あんなものしかできないと思われたら不本意だ」そうで、

「奥崎の陰惨な部分を抜くように編集してるんだよ、編集した人たちとかはやっぱり映画がいちばん、とか思ってるからね。でもオレはそんな思いこみはないからさ、別にAVでいいと思うんだよ。もうとことん陰惨な部分を見せまくって、見ている人間がとことん嫌な気分になって、その先にさ、何かあるんじゃないかと思うんだよな」

 そういうわけで年内完成を目指して完全版、というかディレクターズ・カット、というか、よくわかんないけどそういうものを製作中だそうだ。うまく行けば今年の年越しオールナイトでは観客のみなさんに地獄のような思いをさせてあげられるかも、よ!  


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Kiichiro Yanashita / 柳下毅一郎 / yanasita@gol.com