ピンクのベルマーレ

ピンクのベルマーレ

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2/9(月)
 1時、GAGAでジョニー・デップ監督・脚本・主演の『ブレイヴ』。デップくんが謎の億万長者(マーロン・ブランド)に「おまえを殺させてくれたら5万ドルやる」とか言われる話。見せ場はマーロン・ブランドの出演場面だけかな。拘束2時間いっぱつ撮りとおぼしきブランドがぶつぶつと意味不明の哲学的たわごと(「……苦痛は人間を純化する……きみとわたしとは同類だとは思わないかね……」)をつぶやきながらハーモニカを吹く。演出ゼロ状態。もう誰も止められないっつーか。あとは眠いだけ。

 松竹富士に行って『オースチン・パワーズ』の字幕のことでちょっと話す。


2/10(火)
 終日『オースチン・パワーズ』の字幕チェック。本屋に出かけて『文藝春秋』買ってくる。で、読みふける。「ぼくがこんなに頑張ってるのに死んでくれないB(淳)君に腹が立ってきました」というとこがリアルでよろしい。調書じゃダメかな、と思ったけど(基本的には取り調べの警官が書いたものだから)、十分おもしろかったですね。
2/11(水)
 モーグルとかスノボとかってNHK的には放送禁止の人がいっぱい出てくるからおもしろいね。特にモーグルで優勝した女子選手に抱きついていた豹柄の頭した男子選手。あんたは絶対放送禁止だ。なんにせよ、採点競技って基本的にスポーツじゃねえよな。
2/12(木)
 3時半。松竹で『グッド・ウィル・ハンティング』。ガス・ヴァン・サントのアカデミー9部門ノミネートの感動作。まあ 『ショーシャンクの空』みたいなもんか。その心はノミネートは多いけどひとつも取れないでしょう。まあいい出来だとは思うが、そろそろガス・ヴァン・サントには個人的な映画に戻って欲しいものである。そうそう、戸田奈津子先生はフィールズ賞のことを知らないらしい(劇場上映用プリントでは直っていることを希望する)。

 終わったあと江戸木、エスクァイアのT、松竹富士のHとお茶。ぼくがHに『オースチン』の字幕直しを渡し、Hは全員にアカデミー候補リストを分配し、すると江戸木が『プルガサリ』の試写状をTに渡して、Tが"Switchblade Sisters"のLDをぼくに返していたのであった。なお、江戸木はLA・NY両批評家協会賞の結果からアカデミーは『LAコンフィデンシャル』の勝利を予想している。ぼくは『タイタニック』の浮かれぽんちはアカデミーのころまで続くだろうと思っているので『タイタニック』一押し。一応予想を書いておくか。

 当たったらなんかくれ。

 『犯罪心理研究』届いている。あと山形からポール・クルーグマン。これは一部で密かに回覧されているところの山形の翻訳原稿。経済学の教科書なんだけどメチャおもしろい。経済がこんなにわかりやすいものだとは知らなかったよ。山形翻訳の最高傑作ではないか、と密かに思っているのだが。はたして日の目を見る日は来るのか。


2/13(金)
 実録殺人業界の女王(実録界のパトリシア・コーンウェル、と勝手に呼んでいる)アン・ルールのAnn Rule's Newsletterが来ている。いいな、このおばさん。息子のボディビル写真まで載ってるよトホホ。SASEを送るとサイン入り写真とかもらえるみたいだけど、頼んでみるかな。
2/14(土)
 バレンタインデーなので、妻が食事をおごってくれるという。なんで原宿のフレンチ・カフェまで朝飯を食いに行く。サンドイッチをかじっていたら、隣に赤白のボーダーを着たギャルが座って、タバコをふかしながら脇に抱えたスケッチ・ブックに何かを書きなぐっている。うーん、フレンチ・ギャルだ(もちろん国産だけど)。陽気がいいのでぶらぶら表参道まで歩く。旧アール・ヴィヴァンであるところのアート・ブックショップNadiffへ。棚を見るも、最近はどうも現代アートと写真しか面白いと思えなくて困る。スイスの美術館が出してるヘンリー・ダーガーのモノグラフを注文。うまく入手できればお慰みだ。

 カフェでお茶を飲んでいたら、店員の女の子が「ここにあったピンクのベルマーレ知りません?」とか言ってる。「ベルマーレは黄色と緑じゃ!」と心の中で突っ込み。どうやら「ピンク色のベルメール(の本)」と言いたかったらしい。

 帰宅。『映画秘宝・ベストテンなんかぶっとばせ!』受領。デルモンテってやっぱり天才だ。あとメディアワークスから『エロティカ』送ってきている。ほとんど関係ないモノだが、なぜか『異形の愛』が入っているので送ってきたのかな? でもあれエロティカは無理でしょ、トヨサキさん。中でいちばん笑えたのは「SFをネタにする」って原稿。ラッカーとか『闇の左手』とかってそりゃ性的かもしれないけどネタにはならんだろ、普通。ぼくがいちばん使わしてもらったものとなると、やっぱ小松左京かな。小松はぼくにとっては偉大なエロ作家だった。あと山田風太郎と平井和正。筒井康隆もあまり使えませんでした。いずれにしても日本作家ばっかだったね。


2/15(日)
 また表参道。翻訳家・内田昌之の結婚パーティ。いつも見かけるような人々と、ぱらんてぃあ関係とかの久しぶりに会う人々。会場はなんだか一般家屋を改造したらしき天井の低い店で、しかも天井からさまざまなもの(鹿の角とか)が突き出している。160センチ以上の人お断りって感じだ。堺、添野、大森ほかと表参道のロイホに流れてうだうだと10時ごろまで。(SFオンラインのSF研特集とかにからんで)堺曰く、後輩の人たちとかはぼくのことを恐がってるんだって? こんなに優しいのになあ。

 『ホーリー・ファイアー』(ブルース・スターリング)読了。うーんスターリングってどこまでもサイバーパンクだ。今年のベストはもう決まったぜ。


2/16(月)
 朝6時までサッカーを見ていたので(あいかわらず、柳沢はボールから逃げるような動きをするね。生で見たいものである)あやうくTV東京の『女記者フライデー・謎の暗殺計画』を見逃すところだった。カットごとに衣装が変わるあたりがなんかもうパムさまである。録画しながら見て、途中で家を出る。

 3時、ユニジャパンで『プルガサリ』。ついに劇場公開が実現した伝説の北朝鮮製怪獣映画。日本公開をプロデュースしたのはもちろん江戸木純。いきなり登場するラジカルな貧乏描写にはびっくりだ。さすが北鮮、って違うか。それにしてもこの農民一揆どもはひたすらプルガサリに頼ってばかり。プルガサリがやられたらすぐ負けちゃうし。そこらへんは革命精神でなんとかせんかい!


2/17(火)
 1時、ブエナビスタで『スターシップ・トゥルーパーズ』二度目。なんかアメリカ公開版より7分ほど長くなっているらしい。たぶん残酷描写が増えてるんじゃないかと思うんだが、はっきりしたところはわからん。終わったあと、近くの茶店で中原昌也(VOG)と対談(『HEAD+』に掲載)。「バーホーベンって本気で作ってるんですかねえ」「前半の学芸会シーンとか気が狂いそうだよねえ。でもあれって乱暴なんじゃなくて適当なんだと思うよ」などと書いてると悪口としか思えないんだが、でもぼくら愛してるんですよ、本当に。ともかく「『MIB』とか『ロスト・ワールド』とか、作家の影も見えないようなSFX大作が氾濫する中で、そんな映画を作っても120パーセント自分の映画にしちゃうバーホーベンはすごい!」これに尽きる。青山ブックセンターを覗いて帰る。
2/18(水)
 たらたらと翻訳をしてたら4時になったんで出かける。サッカー・ダイジェストを読みながら渋谷へ。Tower Booksとパルコで大量買いだし。『アメリカン・タブロイド』(ジェームズ・エルロイ)買っちまったぜー高いのに。いつ読むんですかねえ。

 6時半、シネカノンで『バタフライ・キス』.マイケル・ウィンターボトムの処女作でレズビアン殺人鬼のドラマ。「殺人鬼の話で『バタフライ・キス』なんて時節柄マズイんじゃねーのか」とか言いながら見にいったんだけど、あにはからんやおもしろくってびっくり。ひさしぶりに映画に没入し、「あ、ここで終わるのか」って思いを味わったのことよ(要するに、先を読んで「はいここまでで一時間ね」とか考えずに見ていたのね)。裏設定をまったく説明しないところがいい(気狂い女がなんであんなになっちゃったのか、とか)。最近説明しすぎる映画ばかりでうんざりしてたからな。荒涼とした国道沿いの風景だけでオッケー。

 帰るとスティーブン・ライトと『パリ人肉食事件』(佐川一政+根本敬、装幀中原昌也)が届いている。佐川さんっていい友人に恵まれて、本当に幸せだよねえ。あとマリ・エージェンシーから「SFアイを送るので住所を教えてくれ」とのメールが来ていてびっくり。なぜ今(笑)。これはつまり「わたしは人格の違いがわかるのよ」というアピールなのか?? しかしぼくには裏を読むような頭はないので、さっさと返信送っちまったぜ、ベイビー。


2/19(木)
 3時、渋谷に移転したDTM。『ASAYAN』のクリエーター紹介だかのページでインタビューを受ける。なんか生い立ちを聞かれて昔話をいっぱいしてしまったといういかーんこれじゃあ実は鬼畜でもなんでもないただの優等生だったというのがバレてしまうではないか、と思ったので「中学校のときは近所のネコを殺して舌を切ってたけど飽きたんで、高校時代は夙川沿いで浮浪者狩りをやって……」などと嘘八百語っておく。どんな記事になるんですか? 終わったあと川勝さんやタスクさんと無駄話。なんでも大川総帥のところにはすでに景山民夫からメッセージが届いているらしい。ま、当然だよね。

 タワー・カフェで木村くんと密談。あっと驚く(まあ誰も驚かないと思いますが)仕事の話。なんかぼく以外の関係者はみんなさっさとやりたがってるみたいなんだなあ。ぼくさえその気になればすぐにでも本が出そう。しかしそれはオレに死ねということか。いやどうせ死ぬんだから同じか、なんかわかんけど最近ワーキング・ハイなので陽気にくだらない話。おみやげに『素裸のままで』っていう洋ピンのビデオをもらう。オレ、まんまそういうタイトルの原稿書いたっけ。いかん、レベル一緒だ。

 帰ってからふと思いついてシステム8.1にアップデート……したらネスケのブックマークが消されちまったぜ! おい、ブロスのウェブ紹介どうするんだよー


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Kiichiro Yanashita / 柳下毅一郎 / yanasita@gol.com