乗り遅れ人生


9/27(土)
 6時、下北沢で『エコエコアザラク』の清水監督を囲む飲み会。主催者はSFデザイナーの吉永先生であと雑破業(ポルノ作家業)、堺三保(ヲタク業)、SFオンライン組が添野と坂口、それにめるへんめーかー(漫画業)。お互いにけいらくひこうを突きあって血が吹きだす壮絶な飲み会だったが堺はバットマンだったのか? とか なんかヲタクみたいだぞ添野、とか。しかし堺が「リヴ・タイラーよりアリシア・シルバーストーンの方がいい」と言ったときにはショックだったなあ。どう考えてもリヴ・タイラーの方が具合良さそう、と思うんだけどやはりヲタクの考えることは違うのだろうか。「そーかそんなにマグロが好きか」などと言っていじめる。清水監督(世界でただ一人、エアーズ・ロックの上で剣玉の世界一周をやった男)からはいろいろ興味深いお話を聞きましたが、去年の年収が×××万円だったという話には思わずもらい泣き。監督料3エピソードで75万だってえ? これから口が裂けても「チャチい」とだけは言わないようにしよう。それにしても監督に「あいつキチガイ」と言われる女優はいったい……なお、新作『デビルサマナー』は10/4(土)よりTV東京系で放映っす。

 ところでSFオンラインの坂口とは大学SF研時代の同級生である。おたがいSFの夢立ちがたくてエリートの道を捨ててこんなことやってるわけだが、最近同級生の消息を聞いて驚くことが多い。いちばんびっくりが中退してセガに行った竹内が『サクラ大戦』のディレクターだったということだ。うーん、ひょっとしてすげえ偉いんじゃないのか。もう一人、山名! おまえいつからおたくWeeklyなんてやってるんだ! まさか(有)オタキングに入ってるなんてことはないとは思うが……あとはもちろん山形浩生という奴がいる。


9/28(日)
 この日午後2時から4時までの出来事はすべてなかったことになったのであった。虚脱状態。なんか食ったら直るかなと思って大塚までミャンマー料理を食いに行く。実はカラオケ・スナックだったらしく、ミャンマー民主化の闘士たちが流行歌を熱唱してました。帰りにはNLDが出してるとおぼしき日本語のビラを渡される。

 テレビをつけるとテレンス・マリックの『天国の日々』をやっている。見るともなしに見ていたが、気がつくと感動する心を取り戻していた。やっぱりいい映画には心が癒されるなあ。でもやっぱりちょっと絵画的すぎてきれいすぎるかもしれない。こんな映画ばっか作っていると気が狂ってしまうんだなあ。
 その勢いで『エスクァイア』の原稿をやっと書き上がる。なんか全然進んでないみたいだけど、実際には書いては捨て、書いては捨てして3本くらい書いている。まあ最終的に送ったのがクソ原稿じゃあ何言ったってはじまんないけど。


9/29(月)
 太田出版から『女犯坊』、データハウスから『危ない一号#3』送ってくる。なんか村崎の原稿ばっか読まされてる気がするなあ。『危ない一号』の広告っていつごろもらったものなんだろうね。

 1時、ワーナーで『陰謀のセオリー』。NYでタクシー運転手をやっている陰謀論者のパラノイア(メル・ギブソン)がジュリア・ロバーツにつきまとって、最初はただのサイコ野郎だと思ってたジュリアも次第に信じるようになって……ってあらすじだけ書いてると面白そうなんだけど、全然ダメ。メル・ギブソンじゃあデニーロ役は務まらないし、だいたいスターがやってるって時点でもうダメだよねえ(主人公が間違っているはずはないし)。パトリック・スチュアートの顔を見て「そうか宇宙人の陰謀だったのか。オレをビームするつもりだな!」とかそういうギャグでもありゃあ良かったんですが。
 唯一おかしかったのはメルが『ライ麦畑でつかまえて』マニアだってとこ(部屋じゅうにいろんな版の『ライ麦畑』がある)。「本屋でこの本を見つけると買わずにいられないんだ。これをもってるとなんかあったかい気持ちになれるんだ」で、そこでなんか感動的な音楽が流れるんだが、それは違うだろー。リチャード・ドナーはラブ・ロマンスのつもりで作ってるみたいなんだが、しょせんはサイコなストーカー野郎じゃねーかよ。この脚本の勘所がわかってないね。


9/30(火)
 飯田橋のミステリ系麻雀大会にもぐりこむ。メンバー等については我孫子武丸とか大森望とかの日記参照のこと。半日打って+100くらいだろうか。久しぶりの麻雀でなんか楽しく遊ばせていただきましたって感じ(まわりの人がそう思っていたかどうかは定かではないが)。
 喜国さんとははじめてなので挨拶、喜国家では「テレビで変な映画の解説をする人」として認識されている。そう言えば清水監督にも(しばらく話をしてたあとで)「あの……ひょっとして深夜枠でZ級映画の解説番組をやってた人ですか?」と言われてしまったのだった。思ったより見られているらしいのことである。喜国さんから電波系ファンの話を聞く。伊集院光のラジオ番組宛てに、原稿用紙にテープ起こしした奴を送りつけてくる奴がいるって話が爆笑だった。そのファンはテープ起こしから適当に文字をひろってメッセージを受信しているのだという。で、しばらくその手紙がこなかったからすっかり「治ったのかな」って安心していたら、ある日また送ってきた。「しばらく故障してたんですけど、ラジオが直りました」

 喜国さんもどうも日曜の記憶がないらしい。記憶喪失は世界に蔓延している。


10/1(水)
 別冊の打ち合わせで半蔵門の宝島社へ。新社屋に行くのははじめてだ(どうも敷居が高いのである)。普段だったら別冊の編集者なんぞは呼びつけてしまうんだが、今回は相手が石井局長だったりするんで、さすがにそうもいかねー。別冊で企画中の殺人本で原稿を依頼されたので、ジェラルド・シェーファーの"Killer Fiction"を翻訳するよう進言しておく。そのままなし崩し的に別冊の打ち合わせを二件こなす。なんか気がつくと原稿を引き受けている。ひょっとして今日はハイになってんのかなあ。
 渋谷にまわって『エイジ・オブ・アポカリプス』(惰性)、『コミック・ゴン』(美少女エッチ漫画の基礎知識が使えた)など買う。ようやくSFMの翻訳(ジーン・ウルフの短編)できる。なんかトロトロやってるなあ。

 あ、babatinが復活している! めでたいぜ。


10/2(木)
 『現代詩手帖』のおかま対談直し送る。
10/3(金)
 ヘラルドでたけしの『HANA−BI』。混雑を予想して30分前に行くが、すでに半分かた埋まっていた。コミマサとか十三郎とかかなりのご老体がいっぱいいらっしゃっている。川勝正幸、石原郁子とおしゃべり。
 やっぱり死に損なった人間の映画、という感じがする。たけしを見ていた寺島進(超好演! そろそろブレイクするんじゃないかしらん)が「オレたちにゃあ、あんな生き方はできねえな」ともらすんだが、これはたぶん『仁義なき戦い』とかを見てたけしが思っていたことのはずである。時代に乗り遅れた者の諦念。でも、たけしですらその思いを抱いているんだから、これはやっぱりひとつのウェイ・オブ・ライフなのだ。そう感じていない人(自分が時代に乗っていると思っている人)は、どうも信用できない。
 映画のあと、松尾スズキと挨拶し、川勝さんと30分ほどお茶。
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Kiichiro Yanashita / 柳下毅一郎 / yanasita@gol.com