ジョージは悪い奴


7/23(水)
 TCCで『コフィー』。 タランティーノとティム・バートンの最愛の女優パム・グリアーの出世作だ。と言っても全然偉そうに聞こえないのは何故? 全編見所ばかりだが、なんと言っても素晴らしいのは歌。中でもぼくが気に入ったのはキング・ジョージの歌。ヤクの売人キング・ジョージが出てくるときに流れる歌なんだが、「ジョージー……ジョージー……ジョージは悪い奴……ジョージは強い奴……ジョージはキング……キング・ジョージー」って歌詞である。あまりのことに脱力しまくり。意味もなくキャットファイトがあったりパムがレイプされそうになってブラをはぎとられたりするところがすばらしいですね(犯人はそこで「やっぱり時間がない」と思い直し、何もせずに帰ってしまうのだった)。

 渋谷でタワーに行こうとしたら出版に関して幻想をふりまいている白夜書房の藤脇氏とばったり出くわしてお茶する。まあ、やっぱり出版に関する考え方が根本的に違うんだよなあ。ぼくは3000部レベルの出版で完全に満足してるもんねえ。売れるにこしたことはないけど、売るためにこういう仕事してるわけじゃないもん。
 5時半、109のカフェ・ラミルで佐川くんと待ち合わせ。ごま書房から発刊予定の佐川くんの本(仮題『少年A』)のために、佐川くんと唐沢俊一の3人で対談。例によって佐川くんに呼ばれたので、どうでもいいんだけど、友人への協力として。唐沢俊一の独り舞台って感じですか? 唐沢氏との対立点がはっきりしたのがおもしろかった。宮台シンジを評価するかどうかですね(ぼくはもちろん、「頭悪いんじゃないの?」と思っていますが)。ソルボンヌK子から好美のぼるのサリドマイド・ホラー・コミック『奇形児』の復刻版をもらう。うーんこりゃすばらしすぎるっす。

 終わったあと佐川くんとイタ飯。


7/24(木)
 8時起床。9時半の新幹線で豊橋へ。原書房より発刊予定の殺人本のため、河合修治氏にインタビューするのだ。日本一の殺人マニア、河合氏に殺人マニアの心得を聞こうというわけだ。飯を食ったりしていて着いたのは1時半ごろ。インタビューの中身は「われわれはなぜ犯罪マニアになるのか」って感じでした。研究者じゃあつまらない。やっぱりマニアでなきゃ。ひとしきり話を聞いたあと、2階にあがって蔵書を見せていただく。「あ! これ読みたかったんだよなあ。あ! こんなのまである!」と歓声をあげる。「引っ越すんで半分くらい捨ててしまいましたけどね」とおっしゃるが、いやあこりゃもう、思わず隙を盗んでポケットに一冊……しないよそんなこと。いやあ眼福眼福。「わたしなんかコレクション始めたのが40代なんだから、これから頑張ってくださいよ」と嬉しいお言葉をいただいて辞去する。

 原書房の編集者とビールを軽く飲んでから新幹線で帰る。話題はもちろんアジア最終予選。`


7/25(金)
 1時、ワーナーで『コンタクト』。予想に反して悪くなかった(別に良くもなかったが)。SFのプリミティブな楽しさを教えてくれる、という点で評価してあげないといけないと思う。『フィフス・エレメント』とか『バットマン&ロビン』とかってクズ映画と同列に並べちゃあいけない。このすがすがしさは『アポロ13』以来じゃないかな。ベッド・シーンがおかしかった。男の方が「とっても良かった、また電話して」とかって番号を書いて、女(ジョディ・フォスター)がさっさと服を着て、「また連絡するよ」ってつれないというのが笑う。しょうがねえよな、タチだから 渋谷にまわり、機種交換したPHSを受け取る。ふふんこれでPメールだぜ。さらにタワー・ブックスへ。つい"Onslaught"をまとめて買ってしまう。あーあ。
7/26(土)
 サンディエゴ・コミコン帰りの堺三保と会っておみやげの"From Hell"とニール・ゲイマンの"Neverwhere"(本&ドラマ版)をもらう。映画の話とかみやげ話などひとしきり。やはりポイントは『フェイス/オフ』であろう。ああ、早くみたーい。
7/29(火)
 1時、原書房のIと打ち合わせ(というか原稿を一寸刻み五分試しにして渡している)。早く仕事しましょう。はい。3時。今度は青土社のMと打ち合わせ。なんとバロウズの"Burroughs File"の翻訳を依頼される。バロウズは久しぶりですね。もちろん快諾です。その昔、『バロウズ本』でやった翻訳が日の目を見る日がついに来ました。ああ、また売れなくって手間ばっかかかる仕事を引き受けてしまった。いつ出るんですかねえ。
 『SMART』にマンソンの原稿を書く。これまでに書いた原稿をパッチワークしてでっちあげたような代物。トホホ。
7/30(水)
 1時。メタローグの編集者来る。『殺人者の本棚』みたいな本を作りたいというのであった。爆笑。ちょうど「酒鬼薔薇の本棚見てえなあ」と言っていた折だったのでタイミングはばっちしである。企画すっごくいいと思います。問題は、ぼくもその本は読みたいという立場にあるということであった(笑)。結局、「誰が書くんだ?」という問題は解決されないまま終わったのである。
7/31(木)
 エヴァ・ファンが大騒ぎしていてとても楽しそうなので、ぼくもエヴァというものを見てみたいと思った。やはり『エンド・オヴ・エヴァンゲリオン』を見に行こう。しかし、いきなりこれだけ見てもダメだ。そこでテレ東の再放送を4日つづけて見ました。やあこれで話がわかるぞ(しかし、よく考えてみると客観的にはこれはただのエヴァファンの行動なのだった。ぼくはどこでまちがってしまったのだろう)。そこで今日見に行った。松竹セントラル。見た。しかし、端から漏れ聞いていた話と、テレビ版の中身からの推測で想像していたとおりで、別に驚くことは何もないのだった。結局観念論、それもかなり安易な観念論であるところがイヤ。まあやっぱりロボットアニメのレベルでしかないのね。『ラヴ&ポップ』は全然ダメだろうと思います。きっとウォン・カーウァイをさらにダメにしたみたいな映画作ると思うね。

 3時半。KSSで『死にたいほどの夜』。ビートニクの守護聖人、ニール・キャサディの手紙を原作にした映画。全然集中できず。しかし集中して見るほどの映画でもなかった。ほとんど脚色されている様子がないんだが、しかしそれならドキュメンタリーを見ればいい。驚いたことにキアヌ・リーヴスは良かった。キアヌ・ファンの女の子はこれを見たら卒倒すると思いますが。終わってから川勝正幸氏とお茶。

 その後銀座にまわって飲み会。シネカノンのA、松竹富士のH、エスクァイアのT、あと東京人と太陽と東宝東和が二人、それに江戸木純。やはり『フェイス/オフ』。あと目玉のおやじがタイプであること。それと世界のボーリング場の話(ここら辺、ただの覚え書き)。山田宏一は恐ろしいこと。蓮実重彦は嫌みなこと。山本直樹は偉いこと。『コフィ』が重要であること。あとインド映画はやっぱり見なければならないこと。店をかえて12時まで。


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Kiichiro Yanashita / 柳下毅一郎 / yanasita@gol.com