記憶はカニのように自分の内面を食い荒らす


4/15(火)
 6時、松竹で『イングリッシュ・ペイシェント』アカデミー作品賞受賞作を見るのは数年ぶりだ。いいのか、映画評論家がこんなことで。エスクァイアのネタにしようと思ってたんだが、よく考えたら4月下旬公開の映画が5月中旬発売雑誌に間に合うわけがないのだった。というわけで急遽『ロスト・ハイウェイ』に変更。しかし、見るべきところはほとんどない映画だったよ、いずれにしても。とりたてて特長のない映画だった。どこがよくてアカデミーとかあげるかねえ、こんな映画に。なんだったんだろうなあ、あのインド人。
4/16(水)
 LAからTosh Bermanと瑪瑙ルンナのカップルが来ているのでウェルカム・パーティ(と言いつつ先週末すでに家に泊めたりしているのだが)。久しぶりに山形くんを呼んだり。村崎百郎も来てたんだけど、その正体を知らなかった山形くんは驚愕していたのであった。
 山形がズブロッカに入っていたクワガタを食ったりしていたのでなぜかイカモノ食いの話になる。と、そこに居合わせた黒人のドキュメンタリスト映画作家が
「オレは人肉食ったことがある」
 知り合いで二人目だ。なんでも、東アフリカの村で、酋長に歓待されたときのことだという。美味しいスープを出されて、たいらげたあとで、「人肉だよ」って言われたんだそうな。「からかわれたんじゃねーのか?」とかいろいろ言う。なお、「スープだもんで味はよくわかんなかった」そうです。
4/18(金)
 3時半、シネセゾンで『ティコ・ムーン』。フランスのバンド・デシネ作家エンキ・ビラルの第2回監督作品。なんか『アルファヴィル』とかを思い出したな。やたら格好いいんだけど、実は思わせぶりなだけで断片的。でも、変な野心がない分、リドリー・スコットなんかより好感がもてる。「記憶はカニみたいに、内側から自分を食い荒らす」。『ロスト・ハイウェイ』では「ぼくは過去を自分の記憶しているままにしておきたい」ってセリフがあった。記憶と記録。あと、ビラルの絵そっくりの絵があって、はっとする。
 赤いカツラの殺し屋、ジュリー・デルピーがすっごくいい。「客を愛する娼婦は嫌いだ」

 6時、三笠会館で打ち合わせ。まだ未定ながら、たぶんかなり大部の仕事を受けることになりそう。


4/19(土)
 12時半、渋谷DCIにてMtG NY予選に出場。MIスタータ*1+VIブースタ*2のシールド戦だ。Kaervek's TorchとDark Vanishingがあったんで赤黒で組むものの、クリーチャがあまりに貧弱。ニシキヘビ(3/2)とか入れなきゃなんないんだもんな。夜のスピリットがあったんで、ギャグで入れておく(すでに諦めている)。結果ははやばやと1勝3敗となり下の方で遊ぶことに。下位との対戦では夜のスピリットも出せてそれなりに楽しかった。今回も3勝3敗。どうも、この辺が実力かも。
4/20(日)
 今日は早い。9時半起床。10時前に家を出て、10時50分からシネ・ヴィヴィアンで中原昌也(VOG)とトーク。お題は『ファンタスティック・プラネット』。場内は超満員でびっくり。階段の上まで並んでるんだもんなあ。しかしトークは滑りまくったかもしれない。ギャグが全然受けず。トホホ。なお、木曜日かなんかにローラン・トポールが急死してしまったんだそうです。なのでこれは急遽追悼トークとなりました、はい。変なトークを企画したのがいけなかったんじゃないか、と言われてますね。
4/23(水)
 メキシコ旅行の記事をまとめる。こんな記事なら別に行かなくても書けるんじゃないかという説もあるが、そこはそれ、現地に行かないと出ない味という奴である。すでに締め切りを超過すること2日。「ゲラ出ませんよ」とか脅されながら書き上げて送る。
4/24(木)
 アテネ・フランセで『少しの愛だけでも』。アテネのファスビンダー特集には、結局エスクワイアの原稿を書いてたりしたせいで全然行けずじまい。で、終わりの方にちょこっと行く。しかし、これって昔見たっけかな? そういう気もするなあ。モノをあげることでしか(いつも花束を持ってることに注意)愛情表現できない男の悲劇なんだけど、なんかわかるなーつうところが嫌かも。鏡を使って、ヌードの二人が実際には向かい合ってるのに同じ方向を向いているように見える構図、すごい。
4/25(金)
 1時。ワーナーでクリント・イーストウッドの 『目撃』。一部で(というのは中原くんとか江戸木先生とか)盛り上がっているので見に行った。いやあもう凄すぎ。ちょっとヤバイかもしれない。アルツハイマー入ってるかなっつーか。設定自体かなりとんでもない(普通アメリカ人だったら大統領の顔くらい知ってるだろ)んだが、それに輪をかけて描写の省略がすごすぎ。加速度的に早くなっていって、最後の方はイーストウッドがスーパーヒーロー的に神出鬼没。ふと振り向くとそこにいるって感じで。おまえはバットマンか! 
 見ていて思ったけど、イーストウッドは"Dark Knight Returns"を映画化すべきである。あれ以外ないでしょ、はっきり言って。もうひとつ心に残ったのは、娘に向かってエド・ハリスのことを「あの若い警官」と呼ぶシーン。若くねーよ、ハゲてるよ

 日比谷でユナイテッド航空に寄り、チケットをピックアップしといてからアテネへ。『哀れなボルヴィーザー』。靴底を舐めるようにまでして妻にへつらう男が突然性的に凶暴になる、というあたりはファスビンダー自身が入ってるからだろうね、やっぱり。誰も幸せにならない、というのが徹底している。やっぱすげえぜ。


4/26(土)
 夜、シネマテンで『ドイツ・チェンソー大虐殺』の初日トークショー(中原VS根本)を見物に行く。やる気のなさは予想以上に徹底していて、『H』に掲載された対談をそのまま朗読する(!)というものすごさ。しまいに客席に話振ってきたりして。どーすんだおまえら。どうでもいいけど、おれに話振るんじゃねえっつーの。根本さんが福井の原油流出事故のボランティアに行った話は素晴らしかったす。

 終わったあと3人でちょっとお茶。根本さんが帰ったあとはMOODレーベルの人とか村崎百郎(切符買って来ていた。マジメな奴)とか加えて打ち上げる。途中、ロフト・プラスワンフリーク・ナイトに来ていたというファンに話しかけられてびっくり。とっても可愛い子だったので二度びっくり。無愛想で知られるぼくですが、美人には別ですよ、はい。もっとベタベタしてくれてもいいんですよ。しかし、中原くんはストーカーに狙われているそうで(この日も来ていたらしい)、恐怖の日々なのだった。
 なお、家庭的な鬼畜(略して家畜)である村崎は携帯で拘束されて女王様に飼われる日々なのだった。「いやあ、信用してもらえないんですよ」って誰が信用するわけ? きみを?


back to INDEX Diary INDEX

Kiichiro Yanashita / 柳下毅一郎 / yanasita@gol.com