3月上旬


3/7(木)
 ベルナール・チュミの『建築と断絶』(鹿島出版会)が届く。訳者から直接送ってくる献呈本は珍しいが、にしてもこのあとがきはすごいな。

 翻訳作業は、決してむずかしくはなかった。結果としての訳書のわかりにくさは、九九%以上が原著の責任である。論理的な飛躍、論の展開にも何にも貢献しない、ためにする現代思想への言及。遠目には派手な固有名詞と現代思想用語が乱舞するかっこいい文だが、没頭して読むとそれが論理(機能)と断絶している!

 ハードコア山形マニアは建築書のコーナーで立ち読みすべし。エスクワイアの依頼を受けて『ワン・プラス・ワン』を見に行く。ブライアン・ジョーンズはくらい。


3/8(金)
 『STUDIO VOICE』がまた80年代特集をやってる! あーもーちょっと考えなさいよ、なんでもいいからさあ。もうこうなると「昔『宝島』で働いてた」と「今『SV』に書いてる」とどっちが恥ずかしいかってなもんだな。ケニー・ダンカンについて喋らなければならなくなったので、西新宿のMONDOへ出かけてエド・ウッドの『Night of the Ghouls』と『Sinister Urge』をゲット。近くに中古ビデオ屋があったのでつい覗く。どうせ漁りつくされてるだろうと思ったが、『残虐! 狂宴の館』なんぞがあったんで保護しておく。ポール・ナッシーの奴。別に保護したからどうだって訳じゃないんだけどさ。
 あーそれにしてもなぜか突然マジック・ランタン・サイクルが見たくてたまんなくなったぼく。見たいよ見たいよー。
3/11(月)
 東和試写室でクエイ兄弟初の長編映画『ベンヤメンタ学院』を見る。なんかソクーロフみたいだった、としか言いようがないなあ。マジで映画評論家としての限界を感じる今日この頃。そこにはなぜかMas山さんがいたので、その後お茶する。衝撃のエピソードを聞いたのだが、オフレコなので書けないし説明もできない(>そういう訳なんで書いちゃだめだよおおもりくん)。その後成城のPSCへ出かけてマックのお世話。
3/13(水)
 早川書房きってのサイコ好き編集者K氏とお話する。2時から打ち合わせだったのに、気づいたら4時をまわっていた(笑)。佐川くんの話はしたな。あとTC物一般についてのレクチャーと、これまで早川に持ち込んだ本についての売り込みなどなど。K氏からはティール=ホモルカ事件についての本を渡される。ぼくが異様に詳しかったんで喜んでいたが、なあに、はっきり言って日本でぼくだけですよ、この事件について知ってるのなんて。
 神保町で大森望、草思社の編集者Hと打ち合わせ。引導を渡される。
3/14(木)
 ガス・ヴァン・サントの新作『誘う女』の試写があるので銀座へ。どうでもいいけどこういう客をナメたタイトルをつけるのはいいかげんにしていただきたい、ギャガさんよお。原題"To Die for"なんだから、『死んでもいい』か『お天気お姉さん』(有名になるためなら死んでもいい、というお天気キャスターの話なのだ)でしょ、やっぱ。映画は意外とせつなくてよろしい。あとラストに顔を出すデヴィッド・クローネンバーグのカメオ出演に大笑い。クローネンバーグってあんなんばっかやのう。
 終わってから六本木へ。山形浩生の誕生日(の次の日)なのでお誕生会をするのだ。8時半に集合だったんだが、ぼくは試写なので10時西麻布のホブソンズで待ち合わせ。ところがアイスをなめていたら、いきなり山形が一人で来る。「すまん、食事の時間が遅くなったんでまだ食ってる」んで先に立って競歩で向かった先が乃木坂のレストラン。おいおい学生じゃねーんだからよ、乃木坂=西麻布なんてタクシーだよ、タクシー! だいたい携帯ぐらい持ってこい、とかさんざん罵倒する。集まっているのは三上晴子(フロムNY)、白水社のG、音楽ライターの高村さんにリーマンなんだから携帯ぐらい用意しろの野村総研組ら総勢10名ほど。東大建築学科の人がいて肩身が狭い。すいません、ぼく建築のことわかんないんです。なんかディズニーの話とかした気がする。2時間ほどで移動して西麻布のRUBBER。高村さんはハスミ社長が編集だったころの『宝島』に執筆していたことがあるとかでちょっと驚愕した。3時半ごろタクシーで帰宅。ポケットを探ると、鍵がない。

Kiichiro Yanashita / 柳下毅一郎 / yanasita@gol.com