95年12月 LA編


12/16(土)
 そういうわけでディズニーの接待でロスに来ているのである。ウォルトの金でユニバーサル・ヒルトンホテルに泊まり、ルームサービスは取り放題。飛行機はもちろんビジネス・クラス。三食昼寝付きの安楽旅行である。言うまでもなかろうが、魂完全売り切れ状態! ミッキー・マウスはなんと可愛いんだろう。そんな思いが自然と心の中からわきあがってくる。ディズニー・スタジオはすばらしく美しいところだ。緑の芝生にはゴミなどひとつもなく、従業員はいつもニコニコ。そんな姿を見ても、「あ、マインドコントロールされてる」などと考えたりすることは決してないのだった。なんせ魂売り切ってますから。

 ディズニー・スタジオでは映画2本(『花嫁のパパ2』と『トイ・ストーリー』)を見たほか、『ニクソン』など近作のプロモを見せられた。中でも受けたのは『宇宙の戦士Starship Troopers』のテスト版。60秒のフィルムなんだけど、ポール・ヴァー ホーヴェンがくるりとこちらに振り向いて、「親愛なるトライスター映画のみなさん(注:トライスターとハリウッド・ピクチャーズの共同製作らしい)。 『宇宙の戦士』のテストが完成したのでお届けする。ぼくはすばらしい出来だと思う。 どうかこの映画を作らせてくれ。さもなくばっ」と怒鳴ってカメラをガタガタ揺する と、CGで描いたバグどもと人間との戦闘シーン。死体が散らばってるところがヴァーホーヴェンぽい。出来は『ジュラシック・パーク』+『放 射能X』って感じ。キシキシキシキシ……

 しかし、あんなフィルムがいっぱいあるんなら、そればっか見るのも面白いかも、と思ったのだった。ティム・バートンとかすごいの作りそうじゃない?


 そんな風に魂を売りつくしているぼくだが、今日は自由行動の日。オプショナルでディズニー・ランドにも行けますが? ごじょーだんでしょ! とりあえずタクシーを飛ばしてハリウッドに出かけ、Larry Edmondsでトッド・ブラウニングの評伝などを買う。こいつはクールだ。今日はクールが合い言葉である。そこでBeyond Baroque Directorにして「LAでいちばんクールな100人」のTosh Bermanと奥さん瑪瑙ルンナさんに拾ってもらう。これからはLAのクール・ピープルめぐりなのだ。

 まずはSM詩人/パフォーマンス・アーティスト、ボブ・フラナガンの家へ。現在フラナガンの展覧会をできないかと検討中。ボブ・フラナガンはRe/Searchで『スーパーマゾヒスト』という本も出ているスーパーマゾヒスト。つうことは奥さん(シェリー・ローズ)はスーパーサディストだな。でも二人ともとってもナイスな人たちだった。しかし油断は禁物。フラナガンは難病なので、いつ死んでもおかしくない。NYのニューアートでやったインスタレーション用のビデオを見せてもらう。診察台に寝たボブの体をシェリーがいたぶりながら、説明を加えるというもの。事務的な口調でメタメタなことをするのが笑える。しかし、最近は病気が重いのであまりハードなプレイはできないそうだ。サイン入りの詩集をもらって、帰る。

 そのあとは大部の通販カタログでおなじみAMOK booksへ。オーナーのスチュアートと一緒に飯を食う(もちろん、その前に大量の本を買い込むのは忘れず)。もっぱらアモクが最近出版したチャールズ・マンソンの本、Garbage Peopleの話。なんとシャロン・テートの死体写真入りなのだ。「どこで手に入れたの?」「怪しいコレクターがいてねえ」なんでも、『ハリウッド・バビロン3』に入るはずだったものらしい。あとは佐川君の本を出さないか、という話でひたすら盛り上がる。ああ、ディズニーの毒がどんどん抜けていくのを感じる(後日川勝氏と話すと、「それは抜けた毒を再注入してるんじゃないですか」と言われた。そうかもしれない)。なんか、ダチって感じー。

 その後Beyond Baroqueを表敬訪問し、Museum of the Jurassic Technologyを訪れる。「物の忘れ方」を研究していた学者についてとか、針の目にミッキーマウスの彫刻を彫っていたアルメニア人についてとか、怪しい展示がいっぱいあるとってもweirdな博物館。でも博物館疲れもあって、頭がうまく回らず、展示の説明が頭に入らない/聞き取れない。グロッギーになって早々に引き上げる。ハリウッドでは、有名な怪しい日本料理店〈山城〉に入る。「ウドン・パスタ」なるものを注文しようとしたら、和服姿のウェイトレスから「ここの料理は本物の日本食じゃないですよ……」と警告される。いーんだよそれで。ジャパニーズ・ア・ラ・ハリウッドを求めて来たんだから。席には金髪青い目ダサイかっこの純正アメリカ人が、ラウンジのバンドに合わせてチークを踊る。ルンナさんは言う。「こんなにuncoolな連中ばっかいっぱいまとまってるのは初めて見た! きっとみんな共和党員よ!」そしてみんなで歌うのだ。「ヤング・リパブリカーン、ヤング・リパブリカーン、でも今じゃREMもリパブリカーン」


Kiichiro Yanashita / 柳下毅一郎 / PDE01513@niftyserve.or.jp