95年11月
11/10(金)
ほとんど1ヶ月にわたって日記をさぼってしまった。ちょっと構造自体を考え直さねばならないだろうか、という気もしちゃったりなんかしたりして。この間、白水社から出るはずの翻訳の仕上げをしたり、マックの新機種を導入したり(エヘン)、フィルムセンターでの妻の演奏会につきあったり、木曽の温泉に出かけたりなんかでひたすらバタついていたのだった。気がつくと一ヶ月なんてすぐであるなあ。心を入れ替えて、今日からは2日おきぐらいにはつけることにしよう、と思いました。はい。
11/11(土)
LAはBeyond Baroque Art CenterのキュレーターであるところのTosh
Bermanとその奥さんで帽子デザイナーの瑪瑙ルンナさんを迎えてホーム・パーティーをもよおす。あと来たのはWOWOWの添野と小江さん、スタジオ・ジャンプの佐々木氏。添野を呼んでみたのは大当たりで、トッシュと二人でよくわからないガレージ・バンドの話で盛り上がっていた。世界にも数少ない同好の士に会えて喜び合っていたようだ(はたで聞いていても、なんの話をしているのかまったくわからない)。ルンナさんと小江さんも、よくわからないロック・ファンの夫を持った妻同士で意気投合していた(「いつも変なレコードばっかり聞いてるから、趣味が悪いなあと思っていたけど、ちゃんと友達もいたのね」)。おみやげに家にあまっている犯罪本をルンナさんにプレゼントして大層喜ばれる。家から犯罪本が減って妻も喜び、これで三方一両得なり。
11/12(日)
『文學界』から日本の文学の現状についてのアンケート届く。日本文学? ぼくに何を言えというつもりなのか? しかも速達で送っているにもかかわらず、深川の前の住所あて(転送されてきた)。いったいどこの名簿で送ってきたものやら。肩書きはなんてしてやろうか。
11/13(月)
早川書房に出かけて高山さんに『ヴァート』解説を渡す。真面目なSFファンは激怒すること必至のバカ解説なり。ふーんだ、ぼくなんかに頼む方が悪いんだもんねー。でも本自体はおもしろいのでみんな読んでね。しばらく戸川純自殺未遂とか、テリー・サザーン頓死とか(やっぱり『バド・ウィギンズ氏のおかしな人生』の訳者あとがきでイヴリン・ウォーと間違えたのがいけなかったんだろうか)くだらない話に花を咲かす。でもテリー・サザーンの葬式にはちょっと行きたい。誰か取材費出してくれないだろうか。バロウズは来るのかなあ。ホッパーは?
高田馬場で光栄・町田と打ち合わせ。どうも小坊主扱いしてしまって、毎度すまないことである。打ち合わせの中身は内緒だ。さらにその後家庭の事情で早稲田教会へ出かける。
11/14(火)
3時半。シネセゾンで小栗康平の『眠る男』見る。『ダイス』のクロスレビュー用。まさか小栗康平の映画を見る日が来ようとは思ってもいなかった。『DICE』様々だが、その日が来てみても別に感謝の気持ちは湧いてこなかったのは事実である。最近は「この映画は誰のために作られているのか」と考えることが多いのだが、いくら考えてもこの映画を見て喜ぶ人の顔が浮かばない。ひょっとして、ナカソネかな?
その後ヘラルドで『ストレンジ・デイズ』。メソメソしたレイフ・ファインズからアンジェラ・バセットの肩まで、どこを切ってもキャメロン節。キャサリーン、なにをやってたんだい? まあでも飽きない映画であることは確かだ。にしても最近本当に記憶のフラッシュバックものが多いような気がする。終わってから高橋良平氏とお茶。NYみやげのリニア・クイグリーの自伝などをプレゼントする。やっぱり有意義に使ってくれる人のところに行くのがいちばんだと思うしい.。
11/15(水)
『文學界』のアンケートに答える。
1(最近の日本の小説への感想) 翻訳小説以外はほとんど読みません。小説はロジックだと考えています。描写だなんだというのは、すべてロジックのレベルをクリアしてからのことです。日本の小説は(これは小説に限ったことではなく、たとえば映画でも同じですが)、そこのところを勘違いしているのではないでしょうか。
2(注目している日本人作家とその代表作) 京極夏彦 『魍魎の筺』
高橋源一郎 『優雅で感傷的な日本野球』
ついでにSFMの95年度SFベスト5
海外作品
- 『GOJIRO』マーク・ジェイコブスン
- 『黎明の王 白昼の女王』イアン・マクドナルド
- 『ドラキュラ紀元』キム・ニューマン
- 『赤い惑星への航海』テリー・ビッスン
- 『ヴァーチャル・ライト』ウィリアム・ギブスン
ゴジラと共に成長してきた身としては、ちょっとこの小説にはたまらないものがあった。しかり、まちがいなく幼年期のぼくにとってゴジラは神であった。あと、『イマジカ』は期待はずれだった。バーカーは、何を読んでも「この作家はこんなものではないはずだ」という思いにかられる。ひょっとしたら、「この程度のもの」なのかしらん。
以前からの約束で、ブエナ・ビスタのH、メイジャーのO、江戸木純と4人で飲む。いろいろな話を聞く。へえ、某女流映画評論家って××だったんですか。そんな××だとは知らなかった。恐い世の中だなあ。プラスとっても美味しい話をふっていただく。詳しい話はまだ書けないけど、ディズニーというのは素晴らしい会社だ! オリバー・ストーンは仏様のようにいい人だ! いや本当。江戸木氏からは現在執筆中の脚本の話を聞く。『子連れ狼』へのオマージュらしい。
11/16(木)
太田出版のK氏と会う。いろいろ話したんですが、結局書き下ろしで一冊やることになってしまいました。なんか、このままだと来年には4、5冊本が出ることになりそうだ。すごいなあ、いったい誰が書くんだろう。
11/18(土)
『SPA!』から「裏ベスト10」の取材を受ける。ぼくに振られたのはサイコ・ベスト10。
- 1 村崎百郎
- 彗星のようにあらわれた電波系ライター。鬼畜な妄想を書かせたら右に出る者はいない。
- 2 『危ない1号』(データハウス)
- その村崎氏も書いてる鬼畜系雑誌ナンバー1。実用性の高さがポイント。
- 3 『ネクロマンティック』(ニューセレクト)
- ドイツで発禁になった噂の死姦ビデオ。実はアートだ。
- 4 『人生解毒波止場』根本敬(洋泉社)
- 電波喫茶もいいけど、早く『未来精子ブラジル』を書いてください。
- 5 クーロン黒沢
- 若き電脳鬼畜文化人。人生捨ててるね、はっきり言って。
- 6 死体ブーム
- 死体は死体であり、なんの意味もない。「生を逆照射する」なんてバカじゃねえの。
- 7 イソターネット
- 妄想とアングラ情報飛び交うサイバー・アンダーワールド
- 8 『魔法使いサリン』事件
- オタクとオウムの区別くらいはつけるように。
- 9 レスラー本ブーム
- 来日までした。オウムの話をしていた。バカ。
- 10 〈マーダー・ケースブック〉
- いいかげんにしなさい。
「クーロン黒沢」と「イソターネット」を分けているところなど、水増しと言われてもしかたあるまい。
Kiichiro Yanashita /
柳下毅一郎 / PDE01513@niftyserve.or.jp