『女優・林由美香』製作日記

◎最近のお仕事 『興 行師たちの映画史』(青土社)サ ポート・ページもあります。
『ケ ルベロス第五の首』(ジーン・ウルフ 国書刊行会)勝 手に広報部も(勝手に)よろしく。
『ア ヤックスの戦争』(サイモン・クーパー 白水社)を翻訳しました。第二次世界大戦とユダヤ人の運命とサッカーに 関する本です。はっきり言って、ニッチです。
『輝 く断片』(シオドア・スタージョン 河出書房新社)で中編を二編翻訳しています。キモメン文学の金字塔ですよ。
『宇 宙舟歌』(R・A・ラファティ 国書刊行会)を翻訳しました。
『デ ス博士の島その他の物語』amazon(ジーン・ウルフ 国書刊行会)で中編を一編翻訳しています。
『世 界の作家32人によるワールドカップ教室』
amazon(マッ ト・ウェイランド、ショーン・ウィルシー編 白水社)で監訳を担当しました。
女優林由美香 監修した『女優・林由美香』(洋泉社)が10月に発売になります。予約受付中です! 一家に一冊!

『た まもの』(2004年度ピンク大賞受賞)の音声コメンタリーにいまおかしんじ監督、林由美香さんと一緒に参加しています。まだ御覧になっていない方は、是非林由美香さんの姿を見てあげてください。


サッカー日記ははてなでときどき更新
9/1(金)
 雨の中、ナヲイくんとHMJM(原宿)→V&R(三軒茶屋)→FA映像出版(池尻大橋)とまわって林由美香の写真集め&取 材。最後の最後になってV&Rから大量の写真が! まーしかし、こないだも思いましたが80年代末のAVバブル時代から今まで続いてる会社はやっ ぱちゃんとしてるね。結局資料を持ってるのはそういうところなんだよな。
9/2(土)
 シネマヴェーラで『怪猫トルコ風呂』『黒蜥蜴』(深作版)の二本立て見る。
 今日はトークショーがあったので、終了後、中原昌也、高橋洋らとシネマヴェーラ支配人内藤氏の打ち上げにお邪魔してたらふく飲む。ういー。
9/4(月)
 六本木のパークハイアット東京に出かけてキアヌ・リーヴスの取材。実はキアヌは『イルマーレ』のキャンペーンで来ていたのである。だが、彼にとってはあっちはただのお仕事で、本当に好きなのは『スキャナー・ダークリー』の方らしい。というわけで特別に『スキャナー・ダークリー』についてインタビューを受けるという話になったんだが、もう、これが、ね……
 あちこちに差し障りがありまくるので何も書きませんが、いやマジで酷かった。正直、もうこういう取材とかはやめようと思いました。やっても得るものが何もないからね。
9/6(水)
 飯を食うと早々に沼袋へ出かける。沼袋ジュラシックパーク。いやそうではなくて、沼袋のブックマートにCDを買いに行ったのである。昨晩存在を知って冷や汗をかいたこれ。 この手のものはもうすべて調べ尽くしたと思ってたのに! まあギリギリになって情報が入ってくるのなんの。これは天恵なのか、それとも呪いか? 悩みなが らその足で高田馬場へ。コアマガジンの『ビデオ・ザ・ワールド』編集部を再訪してなおも由美香ビデオ調査。広告まで見はじめるといくら時間があっても足り ない。

 残念ながら時間切れで、そのまま千駄ヶ谷の河出書房新社へ行って打ち合わせ。本当は完璧な用意をしていくつもりだったんだが、何もかも駄目すぎる泥縄ぶり。すいません勘弁してください。告知はまだらしいんだけど、来年5月くらいに奇想コレクションで出す某作家短編集についての打ち合わせだと思われたい。いろいろ雑談したが、イーガン読者様の話はワロタ。

 さらに飯を食う間もなく中野に向かってバイオタイド。由美香本作業の日々。もうちょっとだけ続くんじゃぞ。
9/7(木)
 一日原稿書き。四本入れる。由美香本の最終作業前に原稿を入れとかないとたいへんなことになりますんではい。
9/8(金)
 代々木のNEONTETRA(手塚眞の事務所)へ出かける。手塚眞、三留まゆみ、原口智生とデ・パルマ対談。なんつーか、同窓会の中に、一人だけOBじゃない人間が混ざってるみたいな感じ?

 さらに原稿四本入稿。明日からの作業に備える。
9/9(土)
 洋泉社に出かける。なんかビデオのジャケットがあったら便利だと言われてたんで、いきがてら中古ビデオ屋に寄っていく。一本300円均一のところに入る と、ざっと見て即座に選びだす。黙って座ればピタリとわかるって奴ですよ。もうプロだから。なんの? 林由美香の出演作を選びだすプロ!
 300円均一コーナーで一本拾い、1000円のコーナーで一本見つけたけど買わず、さらにもう一軒寄って閉店セールの百均で一本拾う。意気揚々と洋泉社に行くも、それからはじまる地獄の作業……3時ごろ見切りをつけて帰る。
9/10(日)
 通販で購入した『ヘンリー塚本の世界 心に残る林由美香名作集』が届く。この本の製作でいろんな発見があったが、何よりも驚かされたのがFAプロ作品である。全然知らなかったので無知を恥じるばかり。こんな世界があったのか!とずっぽりハマっております。メディアには滅多に登場しないヘンリー塚本のインタビューも載っている『女優・林由美香』、AVファンにも当然お勧めです!

 今日も作業。というか当初の予定だと今日で終えるはずだったのだが当然終わらず。それどころか深夜になってとんでもない事実が判明。どうなるんだこ れ!? 禍転じて福となればいいのだが! ともかく延長戦ケテーイ。デザイナーは死にながら作業。タノベくんも魂を削って作業しておりますが、本が完成す る前に由美香さんのところへ行ってしまうのではないかと気が気ではない。
9/11(月)
 明け方、由美香さんが夢に出てきた。何を言われたのかは覚えていないけど、なんだか本もうまくいくような気がしてきたよ。

 写真捜索班として「ここにタイトルを書いた写真、全部見つけるまで帰ってくるな!」と 送り出したナヲイくんが驚異の捜索能力を発揮、予想以上の大戦果をあげて帰ってくる。それはもう小躍りするほど嬉しいんだが、いや今からレイアウトが ……とデザイナーは呆然。しかし渡邊元嗣監督、大量のスチルとスナップ写真を作品毎に整理して保管しているという。持つべき ものはオタク監督。そしてそのスチルがどれもこれも素晴らしい。この本にこれまで欠けていたピースが埋まったような気がする。この本、隠しテーマは渡邊元嗣再評価、ということになりそうだ。
9/12(火)〜13(水)
 延長戦二日目。今日ですべてを終える勢いで本文デザイナーに作業工程を説明。その後抜けて大学へ行く(準備を何もしていなかった上にDVD-Rがかからなかったので最低の出来。トホホ。

 で、帰ってきたらほとんど何も進んでいないような? 夜中に来てさらにたいへんな事実があきらかになったような? 久しぶりに演説をぶってしまう。やはりこうなってしまった……

 そのまま朝まで。ここで帰るわけにはいかなかったので、デザイナーにおつきあい。一時間くらい机につっぷして、午後にどうにか帰る。

 今起こっているのは、つまりこういうことである。

 家を建てることになったので、施工業者が「柱と壁パネルと天井と内装部品と全部作っておいて、ひとつにまとめればいいんです! 作業は一日で済みますし早いです!」と言った。
 施工当日、まだ壁を切ってる最中だった。
 できあがって建築家とインテリアデザイナーとが寄って組み立てる。あれ? うまくつながってないぞ?
「なあ、この柱、立てる場所間違ってない? これじゃ部屋が正方形にならないよ?」
「すいません間違ってました! これなら大丈夫です!」
で、立てなおされた柱を元に部屋を組み立ててみると
え、これ前より広くなってるじゃん!
「広い方がいいじゃないですか! ものもいっぱい置けるし!」
「そりゃそうだけど、壁のサイズが変わっちゃうじゃん! もう一度壁作り直さないと!」
「広くなるんだったら、中に置く物も変えないと。ちょっと壺探してきてくんない?」
とお使いに出された内装業者が奇跡的に明朝の壺かなんかを見つけてきます。
「すごい! 最高! 頑張った甲斐があった!」
「なあ、でもこれ柱の長さ違わない? こっち長すぎるよ?」
「あ、そうでしたか! じゃあ天井を斜めにつけましょう」
「いや、そんなことしてたら永遠に建たないから! 諦めて柱切って!」
 というわけで粛々と作業中……
9/14(木)
 今日も洋泉社に出勤。とうとうタノベくんが倒れたので、装丁者と二人でどんどん物事を決めていく。早いけれどミスが心配(オレは結構そそっかしいので)。
 原稿を書きつつ由美香本の構成と校正。三時ごろ帰宅。
9/15(金)
 午後、洋泉社出社(ついに出社になってしまった!)粛々と作業を続ける。ようやく山の頂が見えてきた。

 夕方になって腹が減ってきたので、江戸川乱歩賞の受賞式に出かけて飯を食う。カレーとか蕎麦とかスパゲティとかばくばく食って、さっさと帰る。ふははは は。デルモンテ平山夢明氏に会ったら、読売新聞にデカデカと写真が載ったせいで四十年ぶりに小学校時代の親友から40年振りに連絡があったと喜んでまし た。

 んでもって帰社してさらに仕事。結局二時ごろ帰宅。
9/16(土)
 さすがにみんな疲労の色が隠せなくなりつつあるので洋泉社午後四時集合ということにする。時間ができたので図書館でCDを借り、さらに新宿へ出 かけて中古ビデオ&DVDを漁る。いろいろ見たけど、結局買ったのは林由美香のDVDとロレッタ・リーの『最後勝利』のビデオ(199円)だった。ああ、 すっかり80'sロリエロ路線に……

 その後編集部へ。写真の件で大変困っていたのだが、驚くべきオチがついて一気に解決する。その直後、今度はさらに驚くべき新発見。CDを発見したとき に、タノベくんが「これまでの経験から言って、きっと何か出てきますよ」と予言していたのだが、見事に的中。うわわ。しかしもう入るスペースがない。

 深夜、ギンティにFAプロの洗礼を浴びせる。見れば見るほど凄いFAプロ作品。次はヘンリー塚本研究の本かな〜(林由美香以上に謎が多かったりするわけですが)
 ふらふら歩いてたら、神保町のあたりで酔っぱらった外人に道を聞かれて往生しました(英語が通じなかったので)。最後は「シンセツナヒトアリガト〜」と抱きつかれてしまったが。
9/17(日)
 午後一で出社。スタッフの誰よりも早く来た。本日で決着つけます! DTP直しをやらせておいて、途中ちょいと抜けて池袋リブロの大森望&豊崎 由美vs中原昌也トークショーへ。笑う。挨拶。すぐ会社に戻り、仕事つづける。四時頃、ようやく終わりが見えてきた。まあ見えてからがまた長いんだけど ……なんか気がつくとこの一週間でヒゲが白くなってきたような。あああ……

 朝10時過ぎ、ようやくすべての仕事が終わる。長かった……みなさん哀れと思し召したら買ってやってください。

 このまま何も起こらなければ10/12発売予定。反則的にかわいい由美香ちゃんの表紙が目印です。とりあえずご近所の図書館にはリクエストを出して一冊買わせてください!
Kiichiro Yanashita / 柳下毅一郎 / kiichiro.yanashita@nifty.com