映画と忘年会消化日記
◎最近のお仕事 『興
行師たちの映画史』(青土社)サ
ポート・ページもあります。
『ケ
ルベロス第五の首』(ジーン・ウルフ 国書刊行会)勝
手に広報部も(勝手に)よろしく。
『ア
ヤックスの戦争』(サイモン・クーパー 白水社)を翻訳しました。第二次世界大戦とユダヤ人の運命とサッカーに
関する本です。はっきり言って、ニッチです。
『輝
く断片』(シオドア・スタージョン 河出書房新社)で中編を二編翻訳しています。『このミステリーがすごい!』で第4位に輝きました。
『宇
宙舟歌』(R・A・ラファティ 国書刊行会)を翻訳しました。
『た
まもの』(2004年度ピンク大賞受賞)の音声コメンタリーにいまおかしんじ監督、林由美香さんと一緒に参加しています。まだ御覧に
なっていない方は、是非林由美香さんの姿を見てあげてください。
12/19(月)
本日は試写二本。『フライト・プラン』と『ラストデイズ』。
いやー見ていて思いましたがね、映画っていうだけでなんでもかんでも同じカテゴリーにしちゃいかんよね。この二本、どう考えても全然別のジャンルに属する
ものだよなあ。『フライト・プラン』は最近流行の思いつき系サスペンス(ありえない設定からどんどんありえない方向に話が転がっていくんで、観客はびっく
りするんだけど、よく考えるとちっとも辻褄が合ってない、みたいな奴)。『ラストデイズ』はちゃんと映画ですよ。イエローページの営業に来る奴とか、中国
人奇術師の話を延々としている探偵とか、通行人の存在感が凄すぎて一瞬たりとも目を離せない。
12/20(火)
今日も映画。たまった作品を消化ですよ。で新宿へ『SAYURI』を
見に行く。まあ一部で国辱映画とか言われているわけですが、この映画に国辱はないよなあ。だってどこを見ても何ひとつとして日本じゃないし! まあ不満を
言うとすればもっとはったりかましまくって非現実的な世界に徹底してくれた方が良かったですね。ミシェル・ヨーの初登場シーンはありえないくらい神々しい
んだけど、すぐ普通になっちゃうんでね。というか、ミシェル・ヨーがナンバー1で二番手がコン・リーってありえなすぎ! どんなに性格悪くたって、コン・リーが一瞬でトップ芸者になるよ!
その後ラピュタ阿佐ヶ谷の渥美マリ特集で『モナリザお京』。なんかもっとおしゃれなものかと勝手に想像していたが、ベタベタだった。まあ渥美マリだからなあ。
12/21(火)
今日も落ち穂を消化に出かける。新宿で『男たちの大和』(西
新宿のチケットショップで980円でチケットを購入した)。うーん、みんながおもしろいというんでそれなりに期待していたわけですが、それほどのものじゃ
なかったですね。とりわけ現代パートは佐藤純弥節が炸裂していて何度か爆笑。いきなり枕崎の漁業組合を訪ねて「北緯30度何分、東経140度何分に行って
くれる船を探してるんです」と切り出す鈴木京香には笑った。鈴木京香ってどうももっさりしてる印象があるんだが、あの鈍くさそうなところが老人受けがいい
のかなあ。そういう意味ではほぼ完璧なキャストでしたな。それも含めて、まあプロデューサーの映画ですよ、あらゆる点で。
ひとつだけ指摘しておくと、大和艦上での戦闘シーンを誉める人が多いわけだけど、あれ、基本的には爆発があって吹っ飛ぶ兵士たちが写ってる
んだよね。どんなにカットを割って血糊を飛び散らしたとしても、『プライベート・ライアン』流、とは言えない最大の問題はそこにある。つまり、兵士の主観
映像ではなくて、第三者の視点なんだよ。旧来の東映戦争映画から一歩も出ていないんで、さして感心はできませんでしたね。
新宿御苑で忘年会。エスクァイアの歴代担当編集者と山形浩生と計五人で、上海蟹で有名だという中華料理店。蟹はうまかったです。山形が某映画の試写に
行ったら「本日は混み合っておりますのでマスコミの方優先にしていただいております」と追い返されたという話に笑う。いやあ、なかなか勇者がいるものです
ねえ。
12/22(木)
今日も二本。真面目に試写見てます。『サウンド・オブ・サンダー』は
もちろんレイ・ブラッドベリの「いかづちの響き」の映画化。プレスシートのどこにも脚本家の名前が書いてないので驚いた。まあこの脚本を書いた人間の名前
をこの世から抹殺したいと考えるのは理解できないでもない。「そのころ、未来では」な話、久しぶりに見ましたよ。映画の中では一度もタイトルの意味が説明
されないというのも謎である。
とはいえ、映画自体はそういうこととはかかわりなくピーター・ハイアムズ節が炸裂していて結構楽しめましたよ。
『スティーヴィ』は二年前に山形ドキュメンタリー映画祭で見た映画である。レビュウを書かなければならないので、もう一度見に行く。『フープ・ドリームス』の監督が、昔代理兄として面倒を見ていた少年に十年ぶりに会いに行くと、そこはホワイト・トラッシュ地獄のまっただ中だったのであった……いや〜アメリカはヤバイ。しかしなんだ、最近思うようになったんだけど、これって別にアメリカだけの問題ではなくて、日本でもフランスでもどこでも、つまり世界中の先進国で起こっている問題な
んじゃなかろうか。つまりフランス郊外の問題であったり、パチンコ屋とカラオケボックスしかない北関東であったりね。まだ名前のついていない現象であるよ
うだけど(サバービア……というのがいちばん近いんだろうが、大場正明氏の言ってるのはそういう意味ではないような気がす
る)。
12/24(土)
Atrocity Exhibition(2001)を見る。ジョナサン・ワイスというアメリカ人が(たぶん16ミリで)作った自主映画。DVDになってたので見てみました。もちろん、J・G・バラードの『残虐行為展覧会』の映画化。
中身はトラヴィス博士という人が残した実験の映像ということになっていて、「わたしの夫は医者、それとも患者なのですか?」「ミセス・トラヴィス、その
御質問は妥当なものとはあまり思えないんですよ……わたしたちがいま関わっているのは、もつれあったもの−
−特に、第三次世界大戦によって象徴される観念と事件の複合物なのです。もちろん、政治的、軍事的可能性ということではなくて、こういった概
念の内的な本質なわけです」(法水金太郎訳)といった感じである。つまり、マリリン・モンローやベトナム戦争やクラッシュ・ダミーを使った衝突実験や死体
解剖やザプルーダー・フィルムなんかのストック・フッテージに無機質なホテルでの熱のない情事や病院や廃墟で抽象的な会話をしている人々がモンタージュさ
れるという、『残虐行為展覧会』の映画化というと誰もが考えるようなものだ。
ただ、今これを映画化するなら、レーガンやケネディじゃなくて、今現在危険な映像を使用する−−つまり911のWTCをポルノ
グラフィックに読むとか−−そういうことをしないと、『残虐行為展覧会』とは言えないのではないだろうか、とも思う。だがまあ、
自主映画にそこまで求めるのは酷なのかもしれぬ。DVDにはバラード本人の音声コメンタリーとか付いていて、結構気に入っている様子。
12/25(日)
先週までは映画落ち穂拾い週間でしたが、12月最終週は忘年会尽くし。今日は銀座に出かけて「ポルのクリスマス」。詳述ははぶくが、翻訳家の岸本佐知子
さんと国書刊行会のT氏を中心とした出版業界人飲み会。突発的飲み会のはずが、あんまり楽しかったんで第二回をやろうということになり、しかもクリスマス
会なのでプレゼント交換まで。あんたらいくつやねん。
でもワインは美味しかったし、楽しい飲み会で言うことなし。早くも「次はいつにしようか……」の声も。
12/26(月)
ご近所(歩いて三分くらいの本当のご近所)に住むDVD屋さんと鍋をつつく。夫婦ぐるみで昔からの付き合いなんだけど、最近独立して近所に居を構えたの
で、ご近所業界飲み会となったのであった。最近、某社に持ち込んで断られたという話になって、そんなことならオレが一緒に行けばよかったかなあ、とかそう
いう話。まあそれはそれでいかがなものかと思うが、××さんよろしくおねがいしますよ。
12/28(水)
久しぶりに秋葉原へ行く。実は一ヶ月ほど前に型落ちのMacMiniを購入して、iTunesライブラリ管理用に使っていたのだった。だけどたちまちの
うちに旧mac(PPC7500改)からMacMiniへの移行が完了してしまい、旧Macにはまったく電源を入れなくなってしまった。OSX大変使いや
すい。ソフト面での互換性もまったく問題ない。いくつかclassic環境で動かしてるソフトもあるんだけど、それも恐れていたほど遅いわけじゃなく、む
しろ昔より早くなったかもしれない。で、そうなるってえと今度気になってきたのがMacMini自体の遅さである。なんせ旧型だからメモリは256Mしか
積んでないし。ソフトを三つぐらい動かすと一々スワップしまくるのがどうも。やはりメモリ増設すべきなのか? いくつかウェブで調べるかぎり、オレにもな
んとかなりそうな気がする。というわけで1Gのメモリを買ってきたのだ。
結果からいうと開けるのはなんとかなった。増設は簡単だった。ただ閉めるのがちょっと難しくてどうしても隙間ができている。まあDVDのローディングに
は問題ないようなんで、自分としては不満はないです。
あと、おまけでヨドバシに行ってみた。あの調子だと、アキハバラデパートも近く改装されて巨大駅ビルになるような気がする。
その後西葛西に出かけ、大森望らとSF系忘年会。鍋が馬鹿みたいに安かった。西葛西は物価が安くていいなあ。やっぱり川向こうは関税がかからないのかな? 子供が三匹もいたんで結構大騒ぎでした。
12/29(木)
忘年会おさめ。新宿で地獄忘年会。『キング・コング』つ
まらなかったという人がいたんで、いろいろ激論を交わす。もちろん、ぼくは『キング・コング』が今年のベスト1です。ピーター・ジャクソンのことは昔から
知っててとても他人とは思えないとかそういうことを抜きにしてもすばらしい傑作だと思うし、2005年の映画になっていると思います。ちなみに秘宝に送っ
たベスト10はこんな感じ。
- キング・コング(ピーター・ジャクソン)
- 宇宙戦争(スティーヴン・スピルバーグ)
- アワーミュージック(ジャン=リュック・ゴダール)
- ダーウィンの悪夢(フーベルト・ザウパー)*山形ドキュメンタリー映画祭にて上映
- バンジージャンプする(キム・デスン)
- 亀も空を飛ぶ(バフマン・ゴバディ)
- ライフ・アクアティック(ウェス・アンダーソン)
- チーム・アメリカ ワールドポリス(トレイ・パーカー)
- オペレッタ狸御殿(鈴木清順)
- サイドウェイ(アレクサンダー・ペイン)
こうしてベスト10のラインナップを見ると今年もそれなりにいい年だったなあという気がしてくる。本当は朝まで飲んでてもよかったんだけど、なぜ
か翌朝七時の新幹線で里帰りすることになっていたので、ロフトの男の墓場忘年会に顔を出したのち、何人かと電話で話しておとなしく終電で帰宅。みなさん一
年ありがとうございました。来年もよろしく(新年日記に続く)。
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Kiichiro Yanashita / 柳下毅一郎 /
kiichiro.yanashita@nifty.com