ピンクと小津

◎今月のお仕事 『ジェノサイドの丘』(フィリップ・ゴーレイヴィッチ WAVE出版)好評発売中
『殺人マニア宣言』(ちくま文庫) 文庫になって復活! よろしくです。
『SEE YOU NEXT SATURDAY』(ぴあ) 思えば〈ぴあ〉の連載は5年以上になるのでしたよ。
『興行師たちの映画史』(青土社)ついに出ました!


12/10(水)
 上野オークラにて『発情家庭教師 先生の愛汁』『OL日記 あえぐ牝穴』。女池充監督作を見るのははじめて。いやあ、さすがに女池作品は人気があるなあ。女性客まで来ていたよ。まあオッサン連中はグーグー居眠りしてましたがね。さすがに中野貴雄の脚本は面白いんだけど、どうも演出が一本調子なんで話がはじけない。ヒロインは額に穴が開いてると気づくといきなり棒を突っ込んでみるんだけど、これこそ「穴があったらとりあえずなんか入れてみる」というクローネンバーグ主義ですね!

 夜、フィルムセンターに出かけて小津生誕百年記念『東京の合唱』。これはいいですね。とか言ってたらバチが当たりますが、入院した娘をおいて、岡田時彦が息子をおんぶし帰ろうとすると妻がふと追いかけて病室の窓を開け、するとちょうど上がった花火を二人が見上げている。思わず感嘆の溜息をついてしまった。あまりにうまい。
 細川周平氏がいらしていたので、もっぱらサッカーの話。


12/11(木)
 日比谷の東宝ツインタワーに出かけ、『着信アリ』のパンフレットのために神無月マキナ嬢と対談。なおこのビルには東宝ダンスホールという東宝が経営するダンスホールがあるのだが、たまたま行ったのが同じフロアだったもんでピンクのヒラヒラのドレスを着たディヴァインみたいな女性とすれ違ったりして「こ! これは? ジョン・ウォーターズの世界!?」みたいな。

 その後銀座で読売新聞のヲタ記者軍団と飲み会(笑)。いやなんか取材されたはずなんだがほとんどただの飲み会。『萌え単』の実物はじめて見ましたが笑った。例文が素晴らしすぎる。


12/12(金)
 本日もフィルムセンターで『非常線の女』。たぶんこういうことを書くと怒られるんだろうけど、これはやはり小津向きの映画ではないし、田中絹代も違う。まあプリントが素晴らしかったし、後半の盛り上がりとかはさすがなんだけど。

世界ユース選手権U-20日本1-5U-20ブラジル@UAE(テレビ観戦) 立ち上がりにほおっぺたをひっぱたかれてパニックに陥り、何もできないまま終了。先制点もアレなんだけど、いちばんまずいのは二点目だよねえ。あそこで持ちこたえていればダラダラ引っ張って後半勝負に持ち込めたんだけど。
 しかし、このチームは守備重視の割には勝つか負けるかしかない(引き分けがない)不思議な結果を残した。やはりトルシエがしつこく言っていたように、日本人には0-0のメンタリティはないということなのかもしれない。


12/13(土)
〈文学界〉、〈サッカー批評〉など購入。〈サッカー批評〉はドイツ特集。どうせならドイツ人は「ゲルマン魂」をどう論じているのかを語ってほしかったような気もする。〈文学界〉の蓮實VS阿部対談は、ううむ、ここで語られていない名前について考える方が有用なのではないだろうか。というか蓮實に「彼はなかなか頑張っていると思います」なんて甘い言葉をかけてもらっている人間はダメなわけであって、いまだに蓮實から本気で憎まれているデ・パルマやクローネンバーグの偉大さが際立つ、と言うことだ。とりあえず、ぼくは『シンセミア』を読むところからはじめようと思いました。
12/15(月)
 文京区立真砂図書館に出かけ、何冊か本を借りる。ぼくはわりと日常的に図書館を利用しておりまして、したがって当然ながら日本推理作家協会がおこなっている反図書館キャンペーンには反対の立場です。自分の著作はどんどん図書館に入れて欲しいと思っています。もし新刊を一定期間図書館に入れないようにするという推理作家協会の提案がなんらかのかたちで法制化なり受け入れられるなりした場合には、自著はその取り決めからはずしてもらうように申し入れようと思っています。
 正直申し上げて、図書館の複本購入で逸失利益がいくらだとかって自分にとってはまったくリアリティがないのですよ。そりゃ10万部売る人にとってはもう何%かの利益を損している!という考え方が生まれてくるのかもしれないんですが、初版3000部の人間にとっては図書館が一冊でも本を買ってくれるならその方がありがたいです。自著がたちまち絶版になってしまって古書価高騰、とか嬉しくもなんともない。図書館で読める方がなんぼかマシだ。

 その後神保町へ出かけ、青土社のM氏から『興行師たちの映画史/エクスプロイテーション・フィルム全史』見本をいただく。いやあ、まさか本当に年内に出るとはねえ。正直、M氏も途中で年内完成を諦めたときがあったらしいです。正直、ぼくも年内刊行を諦めた時期がありました(笑)。しかしできた。人間やればできる。なお、M氏に「なんか柳下の本作っているらしいねえ」と嫌みを言った人がいるらしいですが、ぼくの本と青山真治の本と巽孝之の本を作ってしまう無定見ぶりこそが正しい編集者の態度だと思うわけですよ。M氏は「アンドレア・ドウォーキンの本とパット・カリフィナの本両方出したしなあ」と笑ってました。
 あ、書店には来週には並ぶ予定です。


12/16(火)
 フィルムセンター『東京の合唱』。この演奏は良かったんじゃないかと思います。映画もいい。

 その後渋谷に向かい、ユーロスペースでドライヤーの『吸血鬼』見る。今回はじめて気づいたんですが(←遅いよ!)、この映画で吸血鬼に襲われている女性、ジビーレ・シュミッツだったんですね。この人、自殺した伝説の女優でファスビンダーが『ベロニカ・フォスのあこがれ』でモデルにした人ですな。


12/17(水)
 内覧試写。

 夜、eiga.comのメンバーおよび滝本誠尊師、BazaarのTらと忘年会。業界地獄耳な人たちだったんでそんな話を。おみやげに『夢の球場の巡礼者たち』(ブレット・H・マンデル 草思社)、『紫陽花や山田五十鈴という女優』(升本喜年 草思社)、『ラジオの仏』(山本直樹 平凡社)をいただく。山本直樹の本は夢日記だそうです。すごい本がでるなあ。ぼくもおみやげに『興行師たちの映画史』を持っていって滝本さんに進呈。即座にそれぞれの本の原価計算をはじめる滝本さん。


12/18(木)
 朝10時半。五反田KSSにて内覧試写。

 午後、イマジカで内覧試写。

……って内覧ばかりで全然意味ねえ! たぶんかまわないと思うので書いてしまいますが、朝の試写は『穴』。短篇四本のオムニバスで、佐々木監督いわく「三輪ひとみの最高傑作!」が入っている奴です。日常のシーンは普通なのに非日常になるとまがまがしい魅力を放つ三輪節全開。ファン必見。


12/19(金)
『ハリー・ポッターの科学』(ロジャー・ハイフィールド 早川書房)、『魔法の声』(コルネーリア・フンケ WAVE出版)いただく。

 ユーロスペースにてドライヤーの『怒りの日』。いやあ、どっと疲れが。その後セルリアンタワーのティールームで太田出版の編集者とものすごくいい加減な打ち合わせ。いやあ、あれで本が出ることになったら凄いな(笑)。


Back to INDEX Diary INDEX

Kiichiro Yanashita / 柳下毅一郎 / kiichiro.yanashita@nifty.com