キーラー探索は続く

◎今月のお仕事 『ファビュラス・バーカー・ボーイズの映画欠席裁判』(洋泉社) 町山の生活を助けるために、買ってやってください。
         『変態性欲ノ心理』(R・v・クラフト=エビング 原書房) 抄訳です。
         『ロバート・クラムBEST』(ロバート・クラム 河出書房新社)編・訳。少々お高いですが、その価値はあると思います。      


8/19(月)
 Ramble Houseの店長(というかたった一人でやってるマニア)にメールを送り、本を注文。先方からはHarry Stephen Keeler Societyへの入会を勧められる。ここには電子テキスト化されたキーラー本が何冊か転がっていますので、興味のある人はチェックしてみてください。HSKSにはpaypalでも会費を払えるということなので、入ってみてもいいかと思っているのであった。

 本日よりちょっと琵琶湖方面へ旅行(家族サービス)に出かけるのでキーラー探索は中断。


8/22(木)
 帰り、京都でちょっと暇ができたので本屋に寄る。三月書房『愛のめぐりあい』(ミケランジェロ・アントニオーニ 筑摩書房)を買う。なぜか買い忘れていたので、50%引きに飛びついたのであった。あと、一条寺前の古書店で『岡山県性信仰集成』を購入(ちょっと高かった)。残念ながら津山事件については何も書かれていないが、夜這いの風習とかはばっちり。
 笠岡市にはおめこ谷という谷があるそうな。

 テレビで U21中国1-0日本 を見る。まあ飛車角抜きとは言え……ボールがまわりだすとなかなか美しいサッカーを見せるU21だが、やはり小野も稲本もいないなあ、という感は強い。どんなにきれいにボールがまわっても、最後に崩すのは個人の力なんだよね。そういう意味でどうなのよ、今後の日本……


8/23(金)
 渋谷で試写。なかなか重い。
8/24(土)
 池袋から10分ばかり歩き、光文社のミステリー文学資料館へ。先に書いたように『世界SF全集』に寄せられていたキーラーの翻訳への解説で、伊藤典夫が「戦前の〈新青年〉に彼の小説が一つ二つ翻訳されているのを見たことがある」と書いていたからである。で、立風書房の『新青年傑作選』にある所載作品総目録をひっくり返して調べたと。どうやら昭和8年の新年増大号に載っているらしい。
 で、ミステリー文学資料館なら〈新青年〉もあるだろう、と思ったわけ(推理作家協会の会員となってはじめて役に立ったよ)。
 行ってみたらいきなり棚になくて司書の人としばらく頭をひねっていたんだが、じきに修復中であることが判明。出してきてくれた号にはしっかり載っていた。「金庫を開けば」という短編。
 いや、これ本当につまらないんで、全然読む必要はないんだけど、たしかにキーラーの特徴は出ている。つまり、異常に説明的なセリフと読者の意表をつくためだけの無意味などんでん返しである。どんな話かを説明してみよう。

「私」が部屋の中にいると非常階段から忍び込もうとする人影がある。「私」は銃をつきつけて賊をとらえる。そこは探偵ドウソンの家だった。「私」は泥棒に取り引きをもちかける。部屋の隅にある金庫を開けてくれたら、放免してやるというのだ。金庫には妻が浮気相手から受け取った手紙が入っており、離婚の証拠とするのに必要なのだ。賊は金庫を開けるが、中からピストルを取りあげ、「私」に向かってぶっぱなした。「私」は逃げながら男が警察に電話し、自分こそがドウソン本人だと名乗るのを聞く。

 いや本当、これだけ。たしかにびっくりはするけどね。あまりの意味の無さに。

 とりあえずキーラー完全制覇はなしとげた、ということで。あーでもまだ知らんうちにどっかで訳されてたりする可能性はあるよなー。

 夜、BOX東中野にて妖奇怪談全集のオールナイト。山田誠二が作ったビデオ映画なんだけど、主演三輪ひとみ、特殊メイクに原口智生というそこだけ強力ラインナップ。編集とナレーションを京極夏彦がやっているというのがある意味すごい。
 はじまる前のトークショーでは特別ゲストで出てきた京極夏彦が語りの圧倒的うまさで場をさらっていた。で、肝心の映画だけど、このレベルの自主映画に三輪ひとみが出ているのがいちばんすごいポイントかと。「まだ執念が足りない〜」(「怪談釘狂い」)ってのがいちばん笑えて良かったんでじゃないでしょうか。まあ三輪ヲタ以外に勧められるかというとアレだが、三輪ヲタなら見て損はない、いや見るべき映画。お約束のように途中居眠りしながら、5時すぎに上映終了。


8/26(月)
 アマゾンUKより"MAPS:the uncollected John Sladek" (John Sladek ed. David Langford)届く。なんだかんだで一年近く出版が遅れていたのではないかいな。スラデック追悼として出た落ち穂拾い短編集。普通の本には入らない元祖ゲームブックとかミステリ短編なんかが集められているので、ミステリ系スラデック読者にとってはいいかもしれない。あと、ディッシュとの共作(すなわちトム・デミジョン短編)も多数。これも珍しい。
8/29(木)
 3日ばかり原稿にかかりきりで試写にも行けずじまい。金にならん原稿を30枚くらい書いてしまった。でも、これは義務だから。

 久しぶりに試写に行く。ソニーで『プロフェシー』。これ、全然見に行く気なかったんだけど、よく見たら『隣人は静かに眠る』のマーク・ペリントン監督作じゃないですか。しかもタイトルが違うけど「モスマンの啓示」だ。これを見ないわけにはいかないぜ。しかしマーク・ペリントン、『隣人〜』の次が「モスマン」とは見事に電波系映画の第一人者にふさわしいフィルモグラフィー。
 中身はアレですよ、モスマンって無言電話かけてきたり、匿名で手紙送りつけたりするのね。かわいい奴だ。ペリントンらしいのは、カメラが無意味にトラックインしてトラックアウトするところかな。

 ハシゴしようと思っていたのだが、歩いていたらまったく間に合わない時間になったので諦める。ひょっとしてモスマンの呪いなのか?


8/30(金)
 シネカノンにて『サラーム・シネマ』。モフセン・マフマルバフの性格の悪さがよく出た傑作。なんか宗教の洗脳してるみたいです。いや実際同じことやってるんだと思うけど。

 帰りBook1st渋谷店で本を見ていたらいきなり店員の女の子から声をかけられる。「柳下さん! ラファティいつ出るんですか?」って無茶ビビリましたよ。もうすぐ出ると思いますが、発売予定日に出るかって言われると?だな。いや全面的にオレが悪いんだけれども。

 その後自宅にK社の編集者T氏を招いてちょっと打ち合わせ。一応だいぶん長期計画でやってますんで。再来年ぐらいにはみなさまのご期待にお応えできる日が来る? かも。


8/31(土)
 ワールドカップ以来のサッカー観戦に出かける。フロンターレ川崎4-0ベルマーレ湘南@等々木 うーんここへ来るのも久しぶり。たぶん、最後に来たのはヴェルディVS鹿島の試合である。レオナルドを見に来たのだ。なんかずいぶん久しぶりなもんで道を忘れていた。
 せっかくなのでちょっと早めに行って武蔵小杉の古本屋チェック。暑くって、駅からだいぶ歩かされるんで参った。旺文社文庫の実録裁判シリーズ『目撃者(オスカー・スレイター事件)』購入。上下巻二冊で900円。
 で、試合ですが、点差ほどの差はなかったような気はするんだよな。中盤の構成力ではベルマーレの方が勝ってる部分もあったし。でも川崎のブラジル人トリオの決定力があまりに凄すぎて勝負にならなかった。女の子が多かったのはW杯効果かな?
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Kiichiro Yanashita / 柳下毅一郎 / kiichiro.yanashita@nifty.com