底抜けW杯日記 完結編(6)

◎今月のお仕事 『パニック・ルーム』(ジェームズ・エリソン ソニー・マガジンズ)発売中。映画のお供に。
         『ファビュラス・バーカー・ボーイズの映画欠席裁判』(洋泉社) 町山の生活を助けるために、買ってやってください。


6/24(月)
 社会復帰のため、ワールドカップで見られなかった映画を見まくる日々。ヘラルドにて『インソムニア』。同名のノルウェイ映画のリメイク作品である。ふーむ、と見終わってしまう。分かりやすすぎるのが欠点か。
6/25(火)
 ソニーに『MIB2』を見に行くが満員で入れず。でも隣の試写室を空けていて、30分遅れで上映していた。ふたつあるんだから当然とはいえ、試写時の対応としてはたいへん立派である。××にも爪の垢を煎じて飲ませてやりたい、と。
 あ、映画ですか? 見終わって30秒ですべて忘れましたわ。(←リハビリが成功していない感じがうかがえる)

 神保町にて打ち合わせ。というかさる本のゲラを受け取る。ゲラばっかやってますが、ずいぶん昔に入稿したものがある日いきなりゲラになって「じゃあ明日までヨロシク」と言われることがすごく多い気がするんだけど、いやオレだけなのかなあ。

で、夜。ついに世界中の希望がカーン様に託されることに。
ドイツ1-0韓国@ソウル
ワールドクラス一人のチームでどこまで行けるか」なんて書いたら決勝まで来てしまった。いくら組み合わせに恵まれていたとは言ってもこれはやはり凄い。カーン様恐るべし。で、各方面にさまざまな感慨を呼び起こしている韓国のベスト4入りだけど、これはやはり『ディープ・コリア』の出来事なんだなあ、としみじみ思ったよ。韓国は変わらねえよ。日本体協の人間が「アジア大会でウリナラに敗れていながら役員の責任が何も問われないとはイルボンは実にうらやましい国ですな」(これ、サッカーの話だよな?)と韓国五輪委員会の役員になじられた話なんか、まんまそのまま。


6/26(水)
 マケドニア西部劇『ダスト』見る。

 夜、埼玉スタジアムへ。今ワールドカップ最後の生観戦である準決勝戦。本来はチケットの予定はなかったのだが、チケット所持者が急病で譲ってもらったのだった。ありがたや。しかし驚くべきことにチケットは大量にだぶついていたらしく、浦和美園駅前では「I Need Tickets」は一人も見かけず。逆にチケットをひらひらさせて買い手を求めている人の姿が目についた。ひょっとして決勝も?

ブラジル1-0トルコ@埼玉
 好ゲームだった。早く確実なショートパスをつなぐトルコと、ハイパーテクなミドルパス(20メートルくらいの距離を曲げてDFのあいだを通したりする)でチャンスを作るブラジルという好対照だが、どっちもあまりプレスをかけないせいでパスがよくつながり、リズム良くゴール前まで行く。クリーンで気持ちのいい好ゲームになった。トルコは好ゲームを演出してくれるチームだね(しかし、ならなんで日本戦はあんなに盛り下がったのか……)。
 個人的にはGKリュシュトウ(トルコの偽シーマン)が素晴らしかった。あとブラジルのヘボDF陣。読みとコースのカットでボールを奪ってしまうテクニックには惚れ惚れする。一点取ったとたんにペースを落としてしまうあたりもいかにもブラジル。

 まあ、最後の最後で帳尻があってブラジルVSドイツという夢の対決になった(弱いブラジルと弱いドイツの対決だっていうのはさておいて)。賭け率はブラジル勝ち8:5、ドイツ勝ち4:1ってとこかな。でも4:1なら、ぼくならカーン様に賭けるね!


6/27(木)
 東和試写室にて『トータル・フィアーズ』。『フィールド・オブ・ドリームス』の名匠フィル・アルデン・ロビンソン監督がトム・クランシーに挑戦!ってことだが。
 いやあこれは受けたよ。すげえよトム・クランシー。なお、こいつはCIA情報分析官ジャック・ライアン・シリーズなので、ベン・アフレックはハリソン・フォードやアレック・ボールドウィンの若い頃だということになる。どう年をとったらこういうことになるのやら。なお、音楽がジェリー・ゴールドスミスなんだが、まるっきり007なんで笑えた。

 夜、第一ホテル東京にて推理作家協会賞受賞パーティ。ここで既報のとおり、古川日出男氏の挨拶が素晴らしかった。ぼくは『アラビアの夜の種族』を楽しめなかった珍しい人なんだけど、脳内朗読の声が間違ってたのかなあ、と思ったりしたよ。


6/28(金)
 美学校で『ベルリン・アレキサンダー広場 第一話』。ビデオ上映。『ベルリン・アレキサンダー広場』はライナー・ヴェルナー・ファスビンダー畢生の大作で、13話+エピローグの全15時間テレビ・ドラマである。かつて一度だけドイツ文化センターで一週間(一日二話ずつ)かけての上映(16ミリ)があって、二度と見るチャンスはないと思ったから毎日通った。第一話のときは150人くらいいたと思うが、エピソードが進むうちにどんどん人が減っていって、最終話を見ていたのは10人くらいだった。後で聞いたら中原昌也も10人の中にいたという。まあ、結局知り合いしかいない、というすごく狭い世界の話である。
 で、今度は一日8時間*2という体力勝負での上映になるそうな。はたしてみんなついていけるんでしょうか。
6/29(土)
 FIFAウリナラカップCorea(TM)決定戦
韓国2-3トルコ@テグ
マヌケな結末」とは書いたが、まさかこんなマヌケが待っていようとは。トルコのワールドカップ史上最速ゴールにも驚いたが、韓国への4位メダル授与、そして監督やミョンボ兄さんを差しおいてチョン・モンジュン胴上げと来たもんだ。狙ってもこんなことはできない。さすがである。チョン・モンジュンにはぜひ大統領になっていただきたいものだ。
 ところで、アヤックス(バルセロナ)式の3-4-3というのは一対一で相手に勝つことを前提にしたシステムだ、というのを以前(レシャックがフリエで暴れていたころ)聞いたことがある。それでいけば、ヒディングが持ち込んだ3-4-3が韓国で成功したのは当然だよね。しかしトルコは一枚も二枚も上手だった、ということである。
6/30(日)
 決勝戦。
2-0ドイツ@横浜
 行けば見られたような気もするが、まあテレビ観戦もいいでしょう。最後にカフーがカップを掲げた瞬間にスモークが吹き出してFIFAアンセムが流れだす演出は最高に格好良かったな。
 試合の方は実力勝ちというか。ブラジルがエメルソンがいなくなって出てきたクレベウソンが獅子奮迅でMVP級の大活躍だったのに対し、ドイツは一点ビハインドで出てくるのがビアホフとアサモアというあたりですでに勝負あった感じ。選手層が違いすぎる。デニウソンもジュニーニョも余ってるんだもんなあ。一人くれ。
 二点目なんかアサモア(FW)がロナウドのマークしてたわけで、こりゃどうしようもないんじゃないでしょうか。DF陣は頑張ってたけどね(リバウドがフェイントかけてるのにラメロウが微動だにせずボールをかっさらった場面は凄かった)。カーン様もここまで一人で引っ張って来たんだしまあ一度のミスくらいはしょうがないだろう……と思ったがドイツでは「スーパーGKなんだからミスするな!」と叩かれているらしい。日本人の甘さを実感する瞬間ですね。つーかドイツ人恐すぎる。一生追いつけそうもない(←こう思ってしまうからダメなんだよ日本人は!)。
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Kiichiro Yanashita / 柳下毅一郎 / kiichiro.yanashita@nifty.com