底抜けW杯日記決勝トーナメント篇 準々決勝(5)

◎今月のお仕事 『パニック・ルーム』(ジェームズ・エリソン ソニー・マガジンズ)発売中。映画のお供に。
         『ファビュラス・バーカー・ボーイズの映画欠席裁判』(洋泉社) 町山の生活を助けるために、買ってやってください。


6/19(水)
 ゆっくりと社会復帰のためのリハビリを続ける。本屋へ出かける。『樒/榁』(殊能将之 講談社)、『骨まで盗んで』(ドナルド・ウェストレイク ハヤカワ文庫)、『「爆心地」の芸術』(椹木野衣 晶文社)あとワールドカップ関連本として『ディナモ・フットボール』宇都宮徹壱 みすず書房)、『豪定本ディープ・コリア』(幻の名盤解放同盟 ブルース・インターアクションズ この本買うの、オレ三度目……)を購入する。

 あと、この期間中に家に届いていた本がいくつか。『ムービー・パンクス』(イーター・ブックス)、『歩兵型戦闘車両ダブルオー』(坂本康宏 徳間書店)、『マーブル騒動記』(井上剛 徳間書店)。この二冊は徳間の日本SF新人賞作品。前回の二冊にはあまり感心しなかった記憶があるが、いただいたのだから読んで感想は書きます。後者は粗筋だけみると昔の日本SFのようだが。


6/20(木)
 久しぶりに映画を見に行く。シネカノン試写室にて『ブレッド&ローズ』、ケン・ローチの2000年作品で、ロサンジェルスの不法移民の掃除婦が主人公。ケン・ローチの映画って、主人公が絶対に不幸になるってわかってるんで、この話もささやかな幸せのあとの裏切りがほぼ予想ついてしまうのだ。伏線張りすぎ。というか、やはりイギリスの話じゃないとダメなんじゃなかろうか。

 その後アップリンク・ファクトリーにて大杉漣とトーク。『変態家族・兄貴の嫁さん』DVD化記念のトークショーで、本来は切通理作がやるはずだったらしいんだが、なんだか昨日いきなり倒れてしまったとかで、急遽お鉢がまわってきたのである。まあ大杉漣ならサッカーの話をすればいいんだろ、と思って引き受けた。
 で、やっぱりサッカーの話してました。ちょっとだけね。大杉漣は試合は日本戦を二試合だけ観戦だそうで、「裏から手をまわせば取れるだろうけど、そういうのは嫌だから。ただ、日本戦だけは悪魔の囁きに負けてしまいました」とのことでした。そういうわけで、すごく立派な人です。

 なんかお客で来ていた人やらアップリンク関係者やらからいろいろといただく。『2-:+』(ステュディオ・パラボリカ)、『クロマ』(デレク・ジャーマン アップリンク)ほか。


6/21(金)
 日本が負けてから、ワールドカップは参加するものでなく見物するものになった。気も抜けている。抜けすぎて今日は家を出るのが遅くなり、会場に着いたのはキックオフ直前。

イングランド1-2ブラジル@静岡エコパ
 日本の試合、ここでやりたかったな。というか、宮城スタジアムって日本開催全会場中最悪の場所なのではという気がしてきた。さて、弁当とお茶を持って世界の妙技を見物。一応イングランド勝利希望ですが、ロナウジーニョの妙技には拍手を惜しまず。リバウドの得点はほとんどロナウジーニョのもので、ドリブルのスピード変化でアシュレー・コールを手玉にとったあたりで勝負ありでしたな。ブラジルの後半のゲームコントロールは見事としか言いようがない。いや、ヘボいヘボいと言っているブラジルだけど、個人のレベルは(そう見せないだけで)ものすごく高いところにあるんだというのがよくわかりました(でもヘボいのはヘボいというのが困ったところ)。イングランドが前半(暑いんで)抑えすぎて、後半になって走りまわるべきときにテンポが上がってこなかった、というのを差し引くにしても。
 終了後は意外にスムーズに浜松へ出て、そこから大阪へ。中津のホテルに駆けこんでテレビをつけると、ちょうどバラックのヘッドが決まるところだった。

ドイツ1-0アメリカ@ウルサン
 神様仏様カーン様。ドイツの相も変わらぬつまらないサッカーと嫌味な勝ち方は、オールド・ファンにとっては一服の清涼剤である。というか、実はドイツがすごく好きだった自分に気づかされている今回のワールドカップ。カーンが怒鳴りまくる姿を見ているだけで心が和んでくる。シューマッハーもこんなスタイルだったっけ。ぼくもカーン様にバナナを投げたい!
 フェラーの采配はかなり結果オーライなのではないかという気がする。今日のケール先発とビアホフの投入は、もし二本あったフリーのヘッドのどちらかが決まっていたらボロクソに言われていたはずである。あるいは、あの幻のゴールに正しい判定がなされていたら(ゴールではないと思うが、まちがいなくハンドである。したがってPKが正解−−でも、このときもカーンは反応してるんだよね)。あと「デーハーミングク」コールはやめろ。頼むから。


6/22(土)
 今朝は中津のホテル泊まり。午前中は古書の街をのぞいたりなんか。

スペイン0(PK4-5)0韓国@光州
 韓国はすごく頑張っている。まず、これだけは認めなければなるまい。それにまあ、ラウールがいないとスペインは一気に迫力がなくなる。スペインは韓国を完膚無きまでに叩きのめすことはできなかった。これも事実ではある。
 だが、しかし、だ。どうなのよ、この試合?
 ぼくは残念ながら世評高いイタリア戦は見ていない(宮城から帰りの車中だった)。しかしスペインのDF陣が両手をあげながらディフェンスし、韓国はユニフォーム引っ張り放題という状況が普通だとは思えない。いや、主審の謎のジャッジはスペインの一点目を取り消したところ(ひょっとしたら審判から見えないところでユニフォームを引っ張っていたのかもしれないし、画面に映っていないところでなんかあったのかもしれないから絶対とは言えない)くらいだったから、普通にディフェンスしててもファールじゃなかったかもしれないけど。そういう状況に追いこんでしまった時点で韓国の勝利、ということなのか。
 ヒディング采配もなあ。いなくなったDFの分は審判がカバーしてくれるからオッケー、と思っていたのでしょうか。いずれにせよ、FW大量投入作戦は日本ではうまくいかんと思う。だって、そういうことしたら柳沢や森島が中盤に下がっちゃうでしょ。あれが通用するのは世界中で韓国だけだよ。

セネガル0-1xトルコ@長居陸上競技場
 トルコは得意のショートパス攻撃でゴール前に迫るが、分厚く守るセネガルを破れない。絶好のチャンスにはハカン・シュクルがスルー。トルコのパスサッカーを見ているとどうも日本代表を思いだしてならない。日本代表のあるべき姿である。森島もいるしモヒカンもいるし柳沢までいる。セネガルではシュートに追いついてゴールラインでクリアした2番のディフェンダーが凄かったですね。もっと早くにハカン・シュクルを替えておけば90分でトルコが勝利していたような気がするよ。
 座ったのがメインスタンド記者席のすぐ横とかだったので、「岡ちゃん来てる!」「ピクシーだ!」とかまびすしかった(ピクシーは手を振りかえしてくれました)。

 なお、準決勝を見に行かれる人は、ぜひトルコ人サポにモリシコールを教えてあげてください。盛り上がること必至。問題は自分への応援だとバステュルクに伝わらないことかな。

 地下鉄の駅まではものすごい混雑なのだが、交差点をわたると閑散として人っ子ひとりいない。今回、どこへ行っても誘導きびしすぎて周囲の歓楽街は商売上がったりである。少しでも地元にお金を落とそうということで、一行でモツ鍋食って帰る。


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Kiichiro Yanashita / 柳下毅一郎 / kiichiro.yanashita@nifty.com