底抜けW杯日記決勝トーナメント篇 一回戦(4)
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6/15(土)
デンマーク0-3イングランド@新潟
新潟の駅では思わぬ人と再会した。フランスVSデンマーク戦でたいそう目立っていた、"Zidane
Who?"のプラカードをふりまわしていた日本人デンマーク・サポである。今度は「ベッカムって誰?」のプラカードを作っていた。ということはこの試合に勝つと「ロナウドって誰よ?」のカードを作ることになるんだろう。なかなか気のいい奴だった。写真を撮っておかなかったのが悔やまれる。
新潟スタジアムはなかなか素晴らしいのだが、問題はアクセスで、行くまでも、ついてからも異常に並ばされること。韓国の試合との差はここだね。そんなに杓子定規にしなくったって、日本人なんだから大丈夫だってのに。で、入ってみると席はメインスタンド最前列! びっくり! ベッカムのとさかの高さまでわかる! こんな距離でイングランド代表を見られるとはなあ。試合途中にすさまじい雷雨になったが、最前列にもかかわらずほとんど濡れなかった。見事な設計
だが、予想に反して試合は一方的なものになってしまった。デンマークGKソレンセンがつまらないミスで失点(ミスというのは可哀相だが、3点めも止めなければならない点だったと思う)。攻撃陣はリオとキャンベルの前に完全封殺。得点の香りすら感じさせない。スタンドではイングランドサポが大狂乱。後半には席を立って踊り出す始末。ムカデになってぞろぞろ行進するに至っては、やっぱりこいつら阪神ファンと同じ生き物なのか!? 面白すぎる。試合の楽しみ方を知ってるなあ。予想以上にあがってきたイングランドとブラジルの対決が楽しみになってきた。
なお、今大会初登場のファウラーはすげえデブになっていた(笑)。ついに出たおっさん選手。これがイングランドだよ!
6/16(日)
新潟からは臨時の夜行急行で大阪へ向かう。ビールでも飲んで寝るべえ、とか思ったが、甘かったわ。駅前のコンビニではビール棚はすでに残らずイングランド・サポによって漁りつくされた後であった。で、弁当とお茶だけ買って乗りこむ。明かりを消さないのでどうかと思ったが、なんの問題もなく熟睡。疲れていたんだよ。
本日は神戸泊まり。テレビで二試合観戦。
スウェーデン1-2xセネガル@大分
スウェーデンの選手はさぞかし悔しかろう。流れるようなポジションチェンジで、後半に入って足が止まってしまったセネガルを翻弄、完全にタコ殴りにしていたのに、ここしかないという一発にやられてしまった。言いかえればセネガルは勝負所がわかっている。
世評高いセネガルの組織力だけど、今日はほとんど感じなかった。いや、もちろんフランスでチンチンにやられたときには強く感じたものだが、今日はすっかり伝統的アフリカ・サッカー。たぶん韓国からの移動直後でもあり、暑さにやられていたんだろう。となれば日本にもチャンスはある。スウェーデンの方が戦い易いだろうなあ、と思ってたけど、ここは弱い方のチームが勝ちあがったんだからラッキー、と思うことにしよう。ヤバイのはディウフ、ディウフ一人。すべては松田くんの双肩にかかっている(不安だ……)。
スペイン1(PK3-2)1アイルランド@水原
燃えた。熱かったな。解説の岡ちゃんが完全にアイルランド・サポと化していて、クインのヘディングの仕方とかに注文を加えているのがおかしかった。今にも飛びこんでいって指導をはじめそうな勢い。しかしほとんどの視聴者と観客にその思いは共有されていただろう。同点になってペースを落としてしまったせいで決め損なった……などという分析がバカバカしくなるほど熱い試合。いろんな意味で憧れだな、アイルランドは。サポもチームも戦い方も。ロビー・キーンがPKを決めたときに感極まって泣き出してしまったおっさんサポにもらい泣き。
日本もいつかこんな戦いができるようになるんだろうか。
6/17(月)
メキシコ0-2USAはテレビ観戦(アメリカの注文相撲。素直にランニングサッカーを戦って勝てるのはホームの韓国ぐらいだ。ここに勝つにはいかに走らせないかを考えないといけない)。その後神戸ウィングスタジアムへ。
ベルギー0-2ブラジル@神戸
得点者リバウド、ロナウド。というわけで結果だけ見ると見事に帳尻があっている。だが試合の方は完全にベルギーのものだった。中盤で気持ちよく持たせて攻撃を遅くさせておいて、最終ラインのところでがっちり止める。カウンターでヴィルモッツ!このくりかえし。ブラジルでまともにサッカーやってるのはロナウジーニョとジュニーニョだけだった。見事に足元サッカーで、あれでイングランドのDF陣を崩すのは難しかろう。しかしイングランド相手だといきなり本気になったりするのでよくわかりません。
ヴィルモッツは立派だった。ブラジルは今回、本当に審判に助けられている。あと、客席にベッカムが来てたいそう盛り上がっていたけれど、ベッカムが偵察したからって何か意味があるんでしょうか? リオとキャンベルとエリクソンが見ていればそれでいいんじゃないかと思うんだがなあ。
ところでここ、スタジアムは本当に素晴らしいと思うが運営は最悪。だいたい兵庫駅のコインロッカー封鎖して、キヨスク休みにしたJRは何を考えてんねん。つうか、おまえらアホやろ! 道路を封鎖して道幅を半分にして全員を兵庫駅に送りこむという混雑必死の状況を作っておいて「ただいま道がたいへん混雑しております」とアナウンスする兵庫県警のアホどもには殺意すら覚えた。
6/18(火)
朝8時半の飛行機で伊丹から仙台へ。空港から駅まで行く途中で見かけたブックオフに寄って100円棚から『ジョン・コリア奇談集2』(サンリオ文庫)掘り出す。よし! 今日は行ける! ついでにビデオ・コーナーで『ヘルブレイン血塗られた頭脳』(監督モンテ・ヘルマン)を購入……これはツイてるのかな? ちょっと微妙なところだな。ところでこの店のビデオコーナーには他にもいろいろ微妙なものが並んでいたので、仙台方面の秘宝読者にはもう少し頑張って欲しいと思った。しのつく雨の中、スムーズに宮城スタジアムへ。
日本0-1トルコ@宮城スタジアム
勝利には百人の父がいるが、敗北には一人の母しかいない、という。だが今回ばかりは母親の名前ならいくらでも挙げられる。
- トルシェの用兵がおかしい
- なぜ、勝っているときに選手を変えるのか。しかしトルシェの発想自体は理解できるから始末が悪い。トルコのパスワークを寸断するために中盤を厚くしたい。それに勝利にハングリーな選手を投入することで浮かれムードも引き締められる、ということだろう。実際アレックスのFKが決まっていればトルシェの采配は神と称えられていたわけだし。
問題は不運な失点をして、追いかけるためにトップを二枚にしようと鈴木と市川を投入したときにはずす選手が稲本とアレックスだったということで、なんか点を取れそうな選手がいなくなってしまった。可能性を感じさせたのは中田のミドルくらい。森島投入は5分遅かった。すべては結果論ですが。
- サポートが弱い
- これは今回のチケット販売の欠点がはっきり出たと思う。代表観戦ははじめてみたいな観客が目につき(誇張でなくサッカー自体はじめてという人もかなりいたと思うね)、スタジアムの構造のせいもあって一体感がない。雨でみんな通路に逃げこんでいたから試合前のウォームアップができず盛り上がってこない。しかもバックスタンドのいちばんいいところにはブロックまるごとでかい空席。
選手名のコールすら(声が揃わなくて)できないっていうのはなあ。隣の席のカップルは(帰宅ラッシュを避けるため)森島投入直後に席を立ってしまいました……
- 選手が浮かれていた
- どんなに頭でわかっていても、あれだけ「グループリーグ突破が目標」と言われつづけていたら気がゆるんでしまう。ナカタコのつまらんパスミスとか、稲本の完全に気の抜けたFKとか、それ以外に考えられない。結局のところ、岡ちゃん言うところの「歴史がない」に行き着くのか。グループリーグ突破を目標にしているうちはグループリーグ突破しか成し遂げられない。でも、次回は優勝目標だからな!
以前どこかに書いたことがあるが、サッカーは負けつづけるスポーツである。勝利はチームだけのものだから、個人成績による勝利というのはありえない(得点王くらいか)。そしてチームは必ず負ける。最後まで残るのは一チームだけなのだから、それ以外のチームはすべて負ける。そして残った一チームにすらも4年後には見るも無惨な最期が待っている。だから我々にできるのは、いかにうまく負けるか、それだけなのだ。
などと書いて合理化しようとしているのだけれど、これはすべてつまらぬあがきに過ぎない。ああ、悔しい。そしてむなしい。実はぼくはイングランドVSブラジルという素晴らしいカードのチケットを持っており、そしてこれには素晴らしく興奮するだろうが、それでもなお、それはただのスペクタクルでしかない。カップは終わった、という気分である。
こんな感想を抱くとは自分でも不思議だ。これまで日本とまったく関係ないヨーロッパのチームにそれなりに入れこんで応援してきたのに。今はじめてワールドカップに参加したような気がする。ワールドカップって負けることだったのだ。だけど敗北に次ぐ敗北にめげずに応援を続けて(応援をした年数だけ敗北はある)はじめて、あのアイルランドのおっさんサポ軍団ができあがるのである。次がある。かならず次がある。ドイツでは優勝してやるぞコノヤロー!
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Yanashita / 柳下毅一郎 / kiichiro.yanashita@nifty.com