試写環境の改善を求む運動

◎今月のお仕事 『ネバーウェア』(ニール・ゲイマン インターブックス)好評発売中。


7/23(月)
 東映にて『Red Shadow/赤影』見る。ちなみに『サムライ・フィクション』も『ステレオ・フューチャー』も見ていないので、このSF監督の映画を見るのははじめて。でも一本見たら充分だよ。わざとはずしてるつもりなんだろうけど、あのこれっぽっちも、一ミリもおもしろくならないギャグと小学生並の猿芝居を延々見せられちゃね。いや本当、フミヤが手裏剣を背面投げして、それを刀で打ち返すのとかっておもしろいの? 誰か笑えるの?
 唯一の救いはミニスカ網タイツ黒のロンブーでハイキック(なんで戦国時代にそんな格好をしたくのいちがいるのかという問題については、中野貴雄監督に聞くように)を連発する麻生久美子だったんだけど、彼女が早々に退場してからの1時間はもはや拷問としか……

 家を出るときはもう一本試写を見るつもりだったけど、あんまり疲れたので帰る。すいません。


7/24(火)
『ロード・オブ・ザ・リング』って要するにピーター・ジャクソン入魂の指輪物語The Lord of the Ringsの30分ほどのトレーラー試写がある。ニューラインの人間がわざわざアメリカから持ってきて、試写したらその足で持って帰るんだという。イマジカまで出かけるが、駅から歩くだけですでに死にそうに。
 まあでももったいぶるだけのことはあったな。こりゃあいけてまっせ。オレはトールキンのそんなに忠実な読者というわけではないが、参ったと言いたくなるぐらい見事な映像化だった。トールキン・マニアとかだとその場で昇天しちゃいそうな。これでジャクソン、オタク映画王の座をバートンから奪いとったかな?
 終わったあと、三留まゆみ、渡辺麻紀らと飯。

 明日へ生きる気力がわいてきましたよ。とりあえずあと4ヶ月がんばって生きていこう。


7/25(水)
 松竹で『ピストル・オペラ』。ノーコメント。って許されませんか。
 これを誉めるのは簡単だ。でもここはやはりダメだと言わねばなるまい。

 映画が終わると外はものすごい豪雨。やったー! 終わったあと、秘宝・田野辺、中原昌也らとお茶を飲む。ところで、ウェブ上でフィルタリングされるコンテンツとしてはアダルトやグロテスク、悪趣味(うちやね)などの他に「耐えがたい冗談」というカテゴリーが存在するという。今日あきらかになったところでは、中原は存在そのものがウェブ的にはフィルタリング。あまりに耐えがたい駄洒落のせいで、ちっとも打ち合わせにならーん。


7/26(木)
 あー冷房かけてないのに部屋の中が30度だ。すずしーい!

 日比谷スカラ座で『千と千尋の神隠し』。終わったあと、場内各所で「えーわかんなーい」「これって夢落ち?」などの声が。そうか、いまどきの映画観客は宮崎駿ですらわかんないのか。これじゃあブラッカイマーがヒットするはずだわ。
 しかしそう言いながらオレももひとつよくわからんところがある。ゲロをだらだら垂らしながら千尋にせまってくるカオナシはどう見ても監督のリビドー部分(この映画は宮崎駿の内世界であるからして、すべてのものは宮崎駿の一部。これは当然のこと)なんだが、それを××××に置いてくるというのはどういう意味なんだろうか?

 で、その足で国際フォーラムの『ジュラシック・パーク3』トーキョー・プレミア。もう国際フォーラムの試写とか行くのやめようかなあ。あんなところで見たら、どんな面白い映画でもつまらなくなっちまうよ。今日なんか三階席だぜ。
 例によってクロが出てきて司会。ゲストがサム・ニール。花束贈呈は真中瞳。プレミアのときの花束贈呈係の微妙な安さがなんとも言えず素敵なのでした。


7/27(金)
 神保町で会津信吾氏と会ってちょっと相談ごと。

 帰ると東北新社よりDVDが届いている。実はヘルツォーク作品のDVDが出るとかで、そのライナーノートを頼まれたのである。「え、どんな感じですか?」とかいろいろ聞いてるうちに、「じゃあサンプルがあった方がいいですね。なんでもお送りしますよ。何がいいですか」と言われたので「……『エマニエル夫人』全集」
 あ、ありがとうございます! 原稿料よりこっちの方がぜんぜん嬉しいです! ちなみにヘルツォークDVDは9/26発売です!


7/28(土)
 なんか涼しくなったせいでボケてあまり仕事をしていません。意味なし。

『PIMP』(アイスバーグ・スリム アーティストハウス)、『暗殺者教団』(岩村忍 ちくま学芸文庫)買う。『PIMP』は実在ピンプの自伝で、ブラック・カルチャーを語る上でははずせない名著です。訳は頑張ってると思うけど、やはり苦しい。


7/30(月)
 試写に行ったのだが、試写室の場所をまちがえて待ちぼうけ。まだボケてる。

 しょうがないんで茶店にこもって仕事する。ちっともはかどってないけど。


7/31(火)
 渋谷のシネカノン試写室でヤン・シュヴァンクマイエルの新作『オテサーネク』見る。

 前にも書いたけど、どんないい映画だろうと最低の上映環境で見ればそれだけの映画になってしまう。それで行けば、狭い試写室の床に座らされ、ケツと首の痛みをこらえながら132分の映画を楽しめたんだから、これはすばらしい傑作だと言ってもまちがいあるまい。
 でもなあ。なんでここまでして見なければならないのか。いや仕事だからってことなんだけど。以前から一部で囁かれている試写環境の悪化だけど、かなりすさまじいところまで来ていると言わざるをえまい。少なくとも、この映画について言えば、オレにとってはさっさと帰って、1800円払ってユーロスペースで見る方がずっと良かった(たぶん今度からはそうする)。でも、映画評論家の看板を背負ってると、それは許されないということなんだろうかねえ。なんだかなあ。


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Kiichiro Yanashita / 柳下毅一郎 / kiichiro.yanashita@nifty.com