ソダーバーグを教えて

◎今月のお仕事 『サッカーの敵』(サイモン・クーパー 白水社)、2月下旬発売。東欧とアフリカと南米のサッカーについて書いたルポルタージュ。解説:後藤健生  


2/21(水)
 FOXに『クイルズ』見に行く。サド侯爵の晩年にもとづく……っていうんだがどこがサドやねん! 史実とはまったく関係ない適当な話なんだけど、なんやかや創作しまくったあげくの結論がサドの小説が犯罪の引き金になるっていうんだぜ! フィリップ・カウフマンもヤキがまわったなあ。

 その足で銀座にまわり、ニュー東宝シネマで『回路』(二度目)。行くぞ、行けるところまで。客は少ないが。パンフを買う。ついでに携帯ストラップも買う。ああ、ものすごく嫌な携帯ができてしまった。これで「……タスケテ……タスケテ……」とかって電話かかってきたらどうしよう!?

『SFが読みたい!2001年版』送ってくる。鏡・山田・大森座談会がひどくて頭かかえる。「未来がない」とかさんざん言っててサイバーパンクの話が出てこないってのが本当に不可解。90年代の回顧のはずなのに、70年代から先に話がいかないってのはいくら昔の名前で出ていますったってマズイんじゃないの?


2/22(木)
 シネカノンで『クイーン・コング』試写。ラウレンティスが『キング・コング』のリメイクを作ったときにイタリア人がでっちあげたパチモンが、なぜか今頃発掘されて日本で世界プレミア上映。発掘してきたのはもちろん江戸木純。
 で、中身ですが、なんとフェミニズムSFであった。小谷真理必見(笑)。

『映画はおそろしい』読む。明晰にして原理的で、まさしく黒沢清の映画のようだ。きわめて刺激的。


2/23(金)
 ヘラルドで『スターリングラード』見る。今回も超満員で、最後の一人に滑りこみ、みたいな。
 なんかミリタリーな人たちはたいそう燃えているらしい。でもオレはスピルバーグの偉大さを再確認しただけだった。だいたい、スナイパー一人が活躍したかどうかなんて、スターリングラード攻防戦の大勢には無関係と思われるのだが、違うのか?

 その後神保町で文藝新連載の打ち合わせ。わりと楽しくできそうな気がするんだけどね。その後洋泉社に寄って田野辺くんからブルトンもらう。


2/24(土)
 コナリー翻訳でおなじみ古沢様が関西方面でゲットしたW杯チケット申込書を送ってきてくれる。ありがとうごぜえますだ。

 夜、原宿でケイブルホーグN嬢の結婚パーティ。お相手はなんと戦争映画サイトの主催者(『戦争のはらわた』がとりもつ縁とか)。というわけで新郎友人には軍服姿のミリタリー系が大集合、みんなで『バルジ大作戦』の戦車歌を歌って大盛り上がりだった。いやあ、オタクの結婚式自体は珍しくないが、相手方がオタクというのははじめてだった。なかなか新鮮なものである。
 eiga.comの人々も来ていたが、これはなんと新郎の会社(映画関係ではない)と同じビルに事務所があるからと言う理由であった。世間の会社ってそういうものなんでしょうか? とりあえず、旦那様には『スターリングラード』について訊いてみたいね。


2/27(火)
 深夜、BSで『血塗られた墓標』見る。麗しのバーバラ・スティール様の映画である。やっぱり三輪ひとみ似てると思うんだけど、どうよ? この線で行った方がいいと思うんだがなあ。
2/28(水)
 ネット通販で購入したKlaus Kinski"All I Need Is Love"届く。これはクラウス・キンスキーの自伝だが、最初に出て訴訟を起こされたもんですぐに絶版・回収となったバージョン。現在出ている"Kinski Uncut"はドイツ語版からの翻訳なのだが、実際には"All I Need Is Love"の削除改訂版だという説があるので、ちょっと確かめたかったのだ。そのために払った額がいかほどかというと……妻に知れると恐いので言いません。

 で、肝心の中身なんですけど、非常に微妙である。加筆した部分と削除した部分と両方あるんだよなあ。でもやはりオリジナル版の方がムチャっぽいが。


3/1(木)
 10日分1ファイルで月3回更新ってとこかな、とか思ってたんだが、よく考えたら2月最後のファイルだけが短くなってしまうんじゃないか? なかなか難しいものである……って最初に気付けよ!

 メディアボックスで『ハロルド・スミスに何が起こったか?』。スプーンを曲げられる超能力パパのお話。でもたとえスプーンを曲げられようと、家族の崩壊を止めることはできないのだった。着眼点は悪くないと思うけど、出来としてはね、まあ、不愉快じゃないって程度の映画。

 その後ヘラルドにまわって『トラフィック』見る。ソダーバーグ監督・撮影の本年度アカデミー賞最有力作品。15分前に行ったらもう満員と言われたんで、せっかく来たんだから宣伝部に顔だしとくか……と思ってうだうだ喋ってたら、なぜか入れることになってしまった。なんか嫌なんですけどねえ、こういうの。でも断るのも大人気ないし……というんで見せていただきました。
 しかしなあ、これ……どこがええんや? いや、オレはこの映画がアカデミーをスイープすることを疑ってはいない。シリアスなテーマを扱っているし、出演者はみんな熱演している。でもね、オレにはまったくおもしろくなかったのよ。思い上がったバカがドラッグで破滅しても、そんなのどうでもいいことだとしか思えん。最大の疑問は、いったいソダーバーグの何がそんなに評価されてるのかってことね。アメリカのレビューもいくつか読んでみたけれど、やっぱりわからないなあ。全然下手だと思うんだけどねえ。冒頭の逮捕シーンなんて本当にひどいよ、なにやってんのかわからんのやから。
 誰かソダーバーグが好きで好きでたまらない人がいたら、是非そこんとこを教えて、ぼくの蒙を啓いてください。


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Kiichiro Yanashita / 柳下毅一郎 / kiichiro.yanashita@nifty.com