『平気で人を殺す人たち』ブライアン・キング編 イースト・プレス
オール殺人鬼アンソロジーである。殺人者の書いた小説、描いたイラスト、撮った写真。序文を書いているのはハーバート・マリン(サンフランシスコ大地震をくい止めるためには生け贄が必要だと考えて十三人を殺した)だ。ハーヴェイ・グラットマンのボンデージ写真(彼はモデルの広告で犠牲者を誘いだし、ボンデージ写真を撮ってしかるのちに殺した)は、SMの暗い欲望に触れる唯一無二の資料としても貴重だ。
『身の毛もよだつ殺人読本』(別冊宝島368) 宝島社
フロリダ在住の警官ジェラルド・シェイファーは、二人の少女の誘拐・殺害の容疑で逮捕された。家宅捜索でクローゼットから女性の拉致、暴行、殺害をつづった「小説」が発見された。そのうちいくつかは実際の行方不明事件に対応することが確認されているが、シェイファー本人はすべてフィクションだと主張している。彼の小説は"Killer Fiction"としてまとめられているが、そのうち二編を訳出している。『平気で人を殺す人々』にも翻訳あり。
『テッド・バンディ』アン・ルール 原書房
ハンサムで頭が良く、口も達者なテッド・バンディは、米国史上最悪の殺人鬼として恐れられた。バンディは刑務所から二度脱獄し、アメリカを横断して二十人以上を殺したのだ。バンディがかつて自殺防止電話サービスでボランティアとして働いていたとき、友人だった女性がのちに全米一のベストセラー犯罪作家になった。アン・ルールである。「実録犯罪界のパトリシア・コーンウェル」ことアン・ルールの厚さに見合っておもしろい唯一の本。
『ジェフリー・ダーマー/死体しか愛せなかった男』 ブライアン・マスターズ 原書房
ジェフリー・ダーマーは十七人の男性を自室に連れこみ、睡眠薬を与えて昏睡状態にしておいてから絞殺し、犯した。死体はバラバラに分解し、頭蓋骨を寝室に飾った。余った肉は食うこともあった。ダーマーの望みは決して抵抗せず、無反応な人間だった。そのために、犠牲者の一人に自前でロボトミー手術をほどこしたこともある(ドリルで頭蓋骨に穴を開け、熱湯を注ぎこんだ)。残念ながら手術は失敗し、さらにひとつ死体が増えただけだった。
『愛犬家連続殺人』志麻永幸 角川文庫
埼玉愛犬家殺人・関根元の共犯者として死体の処理などを手伝った男による手記である。ペットショップを経営していた関根は繁殖用の犬を法外な値段で売りつけ、クレームをつけられると殺していたのである。中村美津子の歌を聞きながら風呂場で死体を解体し、「透明になっちまえば誰にもつかまらん」とうそぶく関根の姿は圧巻だ。微にいり細をうがって描写される解体作業は血なまぐさいだけでなく、奇妙なリアリティを持っている。(新潮社版との異同は確認していません)
『まんがさがわさん』佐川一政 オークラ出版
パリ人肉食犯佐川一政には『蜃気楼』を筆頭に多くの著作がある。だが、これははじめてのコミックだ。もちろんうまくはない。どちらかと言えば稚拙な方である。だが、流麗な文章で描かれる小説にはない凄味がこのコミックにはある。これまで文章力で覆い隠されていたもの、殺人の現実と佐川の生々しい欲望とがあらわになっているからだ。真に戦慄すべき書物であろう。
『日本の精神鑑定』福島章ほか編 みすず書房
殺人者の精神に触れたければ精神鑑定書以上に役立つものはない。昭和10年の大本教事件を筆頭に、十六件の事件の精神鑑定が集められている。阿部定や帝銀事件の平沢貞通(虚言症とされた)、十件の強姦殺人で起訴された小平義雄から金閣寺放火犯まで、戦前戦後の代表的事件が網羅されている。少年犯罪が現代の病と考える向きは杉並の通り魔事件(切り裂きジャックを崇拝した少年が、男児を誘拐して陰茎を切り取った)を参照されたし。
『夢のなか』宮崎勤 創出版
幼女連続殺害犯宮崎勤と〈創〉編集部とのあいだに交わされた書簡を中心にまとめたもの。これははがゆい本である。話は遅々として進まず、宮崎はほとんど核心を話そうとしない。監房生活のディテールや言葉の定義に対する偏執狂的なこだわりと比較すると異常なほどに。つまり、ここから読みとるべきなのは宮崎がいかに事件を話したがっていないか、なのである。殺人は彼にとって自分の存在を世界に告げ知らせるための実存行為ではなく、やむにやまれぬ恥ずべき排泄行為だったのだはないか。
『恐怖の地下室』ケン・イングレイト 中央アート出版
女性ばかり六人を誘拐し、地下室でセックス奴隷として「飼育」しようとしたゲイリー・ハイドニク事件についてのドキュメント。
『完璧な犠牲者』C・マグワイア 角川文庫
誘拐されてから7年間のセックス奴隷生活で完璧に“調教”されてしまったコリーンの物語。
『津山三十人殺し』筑波昭 草思社
『八つ墓村』のモデルになった都井睦雄による日本最大の大量虐殺事件の過程を丹念に追った古典的著作。
『マリー・ベル事件』ジッタ・セレニイ 評論社
「おもしろいから」と二人の幼児を殺した美しく聡明な十一歳の少女マリー・ベルのドキュメント。