『テッド・バンディの帰還』マイケル・R・ペリー 創元推理文庫

(初出 TV bros.2002/3/30)


 テッド・バンディはぼくが選ぶ全米オールタイム殺人鬼ナンバー1である。頭脳明晰、容姿端麗。法科の大学に通い、末は弁護士か政治家かと嘱望されていた。女にはモテたし、そもそも同棲中の恋人もいた。にもかかわらずバンディは確認されただけでも二十三人の女性を殺した(多くの者は最低でも四十人は殺しているはずだと考えている)。バンディは選り好みの激しい殺人者で、犠牲者はストレートの長い黒髪の美女と決まっていた。しかも売春婦などではなく、良家の子女や貞淑な主婦ばかりを手にかけたのだ。法廷では弁舌巧みに自分で自分を弁護し、あまつさえ刑務所から脱走して見せた。最初の脱走のときはすぐ捕まるが、二度目には大陸の反対側まで逃げのびでさらに殺人を重ねた。ほとんど不可能などないかのように見えたスーパー殺人鬼である。しかしさしものバンディも悪運尽きて1989年1月24日、フロリダ州刑務所で電気椅子によって処刑された。バンディの手で娘を殺された大学教授ウェブ・スローンは野次馬たちとともに快哉を叫ぶ。

 それから一年半後、スローンの元を女性が訪れる。女性は行方不明になった娘の捜索にスローンの力を借りようと考えたのだ。似た境遇の女性への同情から調査をはじめたスローンは、やがて恐ろしいことに気づく。娘が行方不明になった土地の近辺で、バンディの手口をそっくり真似た殺人事件が頻発しているのだ。バンディの猿まねをする連続殺人鬼がいるのか? それともまさか……バンディは死刑をも逃げのびてまだ生きているのか?

 というサスペンス・ミステリなんですが、これを真面目に読める人っているんだろうか? だってバンディが誰だか知らない人にとってはバンディがらみの設定はまるっきり無意味だし、誰だか知っていればギャグにしかならない。ぼく自身はこの本のことは原書で知っていた(何度かネタにしたこともある)。だが、まさか翻訳が出ようとは。まるで思いつきだけで書いたような本なんだけど、どうもこの作者は大マジらしくて、次作はなんとマンソンねた。ファミリーの連中がマンソンを脱獄させて世界を破滅させるカルトの教祖に据えようとし、それをマンソンの息子が阻止する話なんだという。うーむ、読みたいぞ。そのためにも『テッド・バンディの帰還』買ってね。