『ウェインズ・ワールド』解説

『サタデー・ナイト・ライヴ』LDボックスセットより転載。原稿料よりもボックスセットがもらえてホクホクのお仕事。アスミックの竹内さんありがとう。


ガース お座敷かかればどこまでも。映画バカ一代ファビュラス・バーカー・ボーイズでございます。わたくしガース柳下、もっぱら頭脳労働を担当しております。
ウェイン わたくしウェイン町山、軽口叩くだけの口先担当。
ガース ついにこの日がやってきちゃいましたね。われわれバーカー・ボーイズがウェインズ・ワールドの解説!
ウェイン 田口久美が『エマニエル夫人』の解説やるようなもんか。
ガース まずこのビデオでウェインズすけど、ウェインズ・ワールドのコーナーだけじゃなくて、サタデー・ナイト・ライヴ全体の構成がわかる作りになってるのが嬉しいですね。
ウェイン ちょっと古いけどな。なんせまだ東西ドイツが分裂してる。
ガース マーラ・メイプルズと浮気したから(笑)。でも、時事ネタがらみの強烈なギャグって、SNLの醍醐味ですもんね。ダナ・カーヴィがやってるブッシュ大統領の病気ネタなんかすごい。ケネディが淋病だったとか−−
ウェイン そんなの当然だって。
ガース バーバラ夫人はバセドー病だからどんぐり目なんだとか、とても許されそうもないギャグですもんね。本当にそういう病気の人いるのに。抗議は恐くないんでしょうか。
ウェイン 抗議や反発を気にしてたら、コメディアンなんてやってらんねえよ。無責任に放言するサイテー野郎だから面白いんだって。日本で時事ネタやるとつまらなくなるのは、批評にしようとするからなんだって。単にバカにしてりゃいいんだよ。
ガース ここでもカーターをバカにして、ブッシュをバカにして、じゃクリントン支持かと思うと、ウェインズ・ワールドでは「今ウッドストックの連中がホワイトハウス仕切ってんだよね、オッソロシー」とか言ってるし。もちろんゲストにも容赦なし。エアロスミスに向かって「ヤクやめたの? うっそー」ってかなりキツい。
ウェイン あいつら、本当に入院してたんだからな。尾崎豊が『ひょうきん族』のゲストに出るかって。
ガース 出たくったって出られませんよ。でも、ローディーがコークを鼻から吸うってギャグをトム・ハンクスがやってる。吸ったあと鼻を拭ったりして。
ウェイン 粘膜刺激するから、鼻水垂れてくんだよ。気をつけたほうがいいぞ。
ガース ロンドンで変なこと覚えたんじゃないでしょうね。ところで、ウェインズ・ワールドの二人って、ヘビメタおたくって設定だけど、出てくる音楽はメチャ古い。なんせエアロスミスにクイーン。レッド・ツェッペリンにスイート。完全に70年代ですもんね、若作りしても年は隠せないっていうか。
ウェイン それがわかるのだって充分年だよ。
ガース だから「アメリカの若者に大人気!」なんて言っても、実は年寄り向けのギャグをやってるってとこがポイントですよね。“トップ10ベイブ”選んでも、『じゃじゃ馬億万長者』のバアちゃんとか、『原始家族フリントストーン』の女の子とか出てきちゃう。とんねるずのギャグみたいなもんスかね。
ウェイン 要するにおたくだってことだろ。本だと『宇宙家族ジェットソンズ』の女の子が好きだって言ってる。「ラムちゃん命!」って言うのと同じよ。
ガース マドンナとからんでも「手遅れになる前に逃げ出せ!」ってさっさと止めちゃうし。おたくだから「エークセレント!」って言ってるうちはいいんだけど、いざ実行って段になると後込みしちゃうんですよ。
ウェイン やに実感あるセリフだな。
ガース ギク。い、いや、おたくのかたちでおたくをバカにしてるってのがうまいスよね。ジョン・ベルーシみたいな紙一重の凄みはないですけど、そこを逆手にとってるとこが、良くも悪くも90年代的。
ウェイン 70年代のSNLが『ひょうきん族』なら、ウェインズ・ワールドは『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで』ってとこか。
ガース ほな“イリノイ・ケーブル・ネット”はサンテレビで、シカゴのセカンド・シティ劇団は吉本でっか。
ウェイン 「パーティ・オン!」は「もーかりまっかー」。
二人 ぼちぼちだんなー[エークセレント]!
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Garth Yanashita / ガース柳下 / yanasita@gol.com