5回目のざーめんの巻・完全版
えーこの原稿は『宝島30』の6月号(5/8発売)に掲載されるはずだったんですが、諸般の事情で検閲されてしまいました。どこら辺が切られたのか、興味のある人はチェックしてくださいってすぐわかるよなんそんなもん。
ガース柳下 ご隠居、どうスか最近は?
ウェイン町山 おお八っつあん久しぶりだね……じゃねーよ、蔵六の奇病にかかって全身の皮膚がボロボロ剥げてくんだよ。この調子じゃ長くねえよ(弱気)。
ガース 悪口ばっかり言ってるからですよ。因果はめぐる糸車ってね……ちょっとあんまり近づかないでくださいよ。
ウェイン 嫌な奴だなどうも。で、いったいなんの用で来たんだよ。
ガース いや今度の号で『宝島30』も終わりなんですよ。だから何やってもいいって言われたんで、ファビュラス・バーカー・ボーイズ復活ってことで。
ウェイン まあ、あの岡留インタビューの腰抜けぶり見たとき、終わったなって思ったけどな。それにしてもなんだよクーロン黒沢って。
ガース それこの後ろのページなんだけどな。まあ書いてることウソ多いけどね。
ウェイン 『さわやかインターネット』って本で「“ジョン大工恐怖”ってなんだ」って書いてたぜ。知恵でも遅れてんのか?
ガース いや若い子だからね、知らないんでしょジョン・カーペンターなんか。
ウェイン 「今月の空想科学」ってのも知能遅滞の類だな。オレ、『怪獣学入門』で『ウルトラマン研究読本』とか、あの手のシロモンにはトドメ刺しといたはずだったのに、いきなり足元から出て来るんだからなあ。
ガース ウルトラマンとかの設定に突っ込みを入れるって奴ね。まあ茶飲み話だけど。
ウェイン それにしたって薄い、薄すぎる、5回目のザーメンぐらいだ! だいたい身長何メートル体重何トンとかって数字、あんなの大伴昌司がシャレでデッチ上げた数字だぞ。そんなもんに突っ込み入れて面白いか?
ガース 先月号では「スペシウム光線は粒子加速だ」とか書いてたけど、別にサイクロトロンじゃなくったって加速する方法なんかいくらも考えられるのにね。
ウェイン あの手の突っ込みの元祖はラリー・ニーヴンの『スーパーマンの子孫存続に関する考察』なんだけど、あっちみたいな論理の飛躍もエスカレートもユーモアもない。そもそもニーヴンも知らないんだろうけどな。
ガース 最近はニーヴンすらも教養になっちゃってるからなあ。
ウェイン 科学知識も学習マンガ程度。と学会の藤倉珊先生も「指摘する気にもならないほど間違いだらけ」って怒ってるぜ。
ガース でも、売れてるんでしょ。
ウェイン 利口ぶりたい精薄が読むんだろ。最近のベストセラーってみんなそう。『知の技法』とか『脳内革命』とか『ソフィーの世界』とか、そんなに利口になりたいか?
ガース 東大とかってブランドをありがたがって、本を読んだだけで“知の世界”に触れた気になって終わらせちゃうのね。本当はその後が問題なんだけど。
ウェイン 東大って偉いか? 俺の知ってる東大出って、柳下とか鶴見とかだぞ。
ガース そりゃあ東大よりは町山さんの方に問題があるんじゃないスか? 類友って言うし。
ウェイン それにしても最近エセインテリが多すぎないか? たとえば『新世紀エヴァンゲリオン』見てた?
ガース テレ東でやってたガイナックスのアニメね。見ないって。そういうのは止めたんです、ぼくは。オタクが大騒ぎしてたのは知ってるけど。
ウェイン あれも単純な手口でさ、福音(エヴァンゲリオン)とか分かりやすいキーワードをちらちらさせてオタクの知的コンプレックスをくすぐったんだよ。でも本当はパクリばっかりなんだ。たとえば画面いっぱいにタイトルを明朝体でドーンと出すとか。あれって市川昆だろ?
ガース はあ、『木枯らし紋次郎』とかでやってた奴ね。
ウェイン あと『ナイトヘッド』とかに似たシーンも多い。要するに、会話のシーンをロングのスティルでセリフだけ聞かせたり、妙なアングルばっか使ったりね。それって元祖は実相寺昭雄でしょ。特撮使わないで非現実的に見せるための苦肉の作でね、病院とか学校とかでロケするとさらに効果があがる。
ガース で、実相寺はさらにゴダールやアラン・レネからパクってきてるわけね。
ウェイン でも、そういう原典を知らないシロウトさんは大喜び。あと、アニメ・ファンは何も知らねえと思って『愛と幻想のファシズム』からパクって話初めたけど、最終回はなんと『ソフィーの世界』のマネっこ。両方ともベストセラーだろ、恥ずかしくないのかっての。で、そういう意味で最高に恥ずかしいのが三谷幸喜。
ガース 『古畑任三郎』ね。見てないけど。その前に『王様のレストラン』もあったか。
ウェイン あれは山田太一が書いた『高原にいらっしゃい』ってのがあってさ、流れ者の田宮次郎がつぶれかけたペンションを立て直す、という。三谷は『ふりむけば奴がいる』も『ブラックジャック』からパクリまくり。
ガース 『古畑』はコロンボだしね。しかし、こう考えるとどれも元ネタが近いですねえ。
ウェイン たとえばコロンボってのはイタリア系の貧乏刑事でさ、それが金持ちWASP連中の醜い犯罪を暴くってとこにあのドラマの批評性があるわけだ。だけど『古畑』にはそういう思想はチンポのアカほどもない。おまけにこないだ始まった『竜馬におまかせ』ってのは何だ? 早坂暁の『天下御免』と倉本聰の『浮遊雲』を足して二で割っただけじゃん。結局、「めくらの国に行けば片目の人間でも王様」ってことなわけよ。
ガース つまり三谷を面白がってるのは70年代の名作ドラマを見てない人間だけ、と……あ、そゆことか。じゃあこれで失礼します。
ウェイン おい! ちょっと待て、話は最後まで聞いてけ。で、本当のドラマを知るためには、だ。これを読んでちょ! 『映画秘宝』第5弾『夕焼けテレビ番長』!
ガース 結局宣伝なんだから……そのタイトル、なんですか?
ウェイン 放課後に原っぱで野球して帰って来てだな、「かあちゃん、メシは?」って言うと「まだよ。テレビでも見て待ってなさい」。で、包丁がまな板を叩く音を聞きつつテレビを見るっていう、そういうイメージだな。
ガース ダメだ、こりゃ。
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Garth Yanashita / ガース柳下 / yanasita@gol.com