大森望のワールドコンレポート


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●ワールドコン日記まえがき

 World Science Fiction Convention、略してWorldcon。日本語では「世界SF大会」なんですが、いったいワールドコンとはなんなのか。

 第一回のワールドコンは、1939年にニューヨークで開かれたNycon。SF研究者としても有名なサム・モスコウィッツが実行委員長をつとめ、出席者は200人。
 以来、第二次世界大戦中の42年から45年まで休止されたのをのぞいて、毎年、世界各地で開催されている。
 といっても、中心はあくまでもアメリカ。メジャーリーグのワールドシリーズに日本や韓国のプロ野球チームが出場できないのと同様、「世界」といっても、いままでの56回のうち、英語圏以外の国で開催されたワールドコンは2回しかない(70年のハイデルベルクと、90年のハーグ)。8割はアメリカ国内の開催で、あとの2割がイギリス、カナダ、オーストリアってとこですか。

 日本SF大会(あきこん)のワールドコン企画で山岸真氏に教えてもらったところによると、世界SF大会の開催地は、世界を四つの地域に分けて(アメリカ西部、中部、東部、アメリカ国外)ローテーションしてるんだとか。去年は西海岸のロサンジェルスだったから、今年はテキサスのサンアントニオとか、そういう感じ。もっとも、該当地域から立候補が出ないことにはどうしようもないので、厳密に守られてるわけじゃありませんが。
 各地のファン組織がボランティアで運営するのは日本SF大会とおなじ。というか、日本SF大会は世界SF大会をある程度お手本にしてるわけですね。シティホテルと付属コンベンションセンターを利用するタイプの日本SF大会は、ミニワールドコンみたいなもん。

 ただし、ワールドコンの場合、運営の手ぎわはさすがにプロフェッショナル。
 参加者数は、最近10年で見ると、だいたい3500人から7000人ぐらい(過去最大は、84年のL.A.con IIで、8365人)。
 まあ日本SF大会の3、4倍くらいの規模ですが、企画の充実ぶり、ゲストの豪華さ、ディーラーズルームに出る店の数なんかはとても比較にならない。
 開催期間は、通常、レイバーデイ(9月の第一月曜日)前の週末を含む5日間(ただし来年ボルチモアで開かれるBucConeerは、8月5日〜9日)。参加費は、5日間通し(full-membership)で150ドル、一日だけだと30ドルとか、そのくらい。これが当日料金なので、事前に申し込むと割り引きがあります。

 日本の大会だと、事務局通じて予約するより直接ホテルに電話するほうが安かったり、部屋が選べたりするケースが少なくないけど、ワールドコンの場合、ホテルのコンベンション割引率はかなり高く、今年なんか通常料金の40パーセントオフだったらしい。ひと部屋90ドルから110ドルくらいなので、二人で行けばかなり安上がりですね。どうせおれは申し込み期限に遅れて、143ドルとかの高い宿泊料になっちゃったけどさ。

 さすがにサンアントニオやボルチモアだと、格安航空券使っても10万近くかかるけど(大森がとった今回のチケットは、東京→デトロイト→メンフィス→サンアントニオ→メンフィス→サンフランシスコ→東京で93,000円)、西海岸開催の年なら6〜7万。参加費・ホテル代で5〜6万。まあ北海道や九州の日本SF大会に出るのとそんなに変わらない。ま、買い物しなければ、の話ですが。

 柴野さんに頂いたプログレスレポートの最新号(6号)に載ってるリストによると、LoneStarCon 2参加者は全3676名(当然、当日参加は含まず)。このうち40人が日本からで、例年に比べるとかなり少な目(去年のL.A.Conでは、たしか200人以上だったはず)。それでも、国別では、カナダ、イギリスに次いで第四位。以下、オーストラリア、ドイツ、オランダ……とつづく。

 ワールドコンで特徴的なのは、日本人以外の有色人種がほとんどいないこと。SFっていうのは白人と日本人の文化なんですね。まあこれは、SFにかぎらずおたく文化全般に言えることかも。でも韓国や中国の参加者もいないから、さらに極端でしょう。
 体型的にもけっこう特徴があって、さすがにコミケでも見ないような巨体がごろごろしてますが、そのへんの雰囲気は、シャーリン・マクラム『暗黒太陽の浮気娘』(早川書房ミステリアス・プレス文庫)に書いてあるとおり。

 では、はるばる外国までSFのイベントに出かけてなにをするか。

 SFマニアじゃないと行ってもつまんないだろうと思う人がいるかもしれないけど、これがそうでもない。ふだんはほとんどSF読まないけどワールドコンは欠かさない人とかもいるわけで。いや、すでにふつうの海外旅行(SFと関係のない旅行)ができない体になっちゃってるケースもあるでしょうが。
 とりあえず、アメリカのSF小説、SFTVドラマ、SF映画、SFアート、SFゲーム(このSFはファンタジーと交換可能)のうちどれかが好きなら、ワールドコンに参加する値打ちはある。分野を問わず、おたくなら、コミケに行って、かならずなにがしかの楽しみが発見できる——ってのと似ていなくもない。
 日本SF大会と違って、ワールドコンではいまだに活字のSFが占めるウェイトが高いから、海外SF読者にとっていちばん収穫が多いんじゃないかという気はするけど、映画見てるだけでも、あるいはジャパニメーションおたくのアメリカ人たちと話をするだけでも、じゅうぶん参加する甲斐はあるでしょう。ないか。

 作家ゲストはディーラーズルームでかわりばんごにずっとサインをしてるので、そこに並び続けてるだけでもあっという間に時間が過ぎていく。ほかに、お茶会と朗読会とかもあって、人気作家ひとりをひたすら追っかけて過ごす人もいたり。日本からのおみやげなら、ちょっとしたものでもすごく喜ばれるんで、ターゲットを絞って仲良くなる作戦も成功率は高い。
 昼間のプログラムはパネルディスカッション中心。もちろんビデオ、映画の上映やゲーム系の企画もある。まあそのへんは、じっさいに大会会場に着いてから、おいおいご紹介していくことにしよう。



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