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【5月21日(水)〜22日(木)】


 日本ファンタジーノベル大賞一次と小説すばる新人賞二次の箱をかたづけ、小松左京賞一次の箱を開ける。5月は新人賞下読み集中月間なので、うかうかしているとホラーサスペンス大賞の箱も来てしまい、積み上がった段ボール箱で玄関の出入りが不可能になってしまうのである。

 パソコンの電源不調は、ダメ元で近所のMr.コンセントに持ち込んだら、半日で修理完了。基盤に細いヒビが入っていたのが原因らしい。

 書くのを忘れてましたが、10枚まとめて購入した田中啓文のデビューCD、『ニュー・シネマ・パラダイス』が到着。恩田さんの推薦文がほしいと田中啓文が電話してきたので、忙しいなか恩田さんに紹介する労をとったのは大森ですが、もちろんタダで10枚もくれるはずはなく、ぜんぶ自腹。ま、スタージョンのジャズ小説翻訳で世話になったからな。といっても義理で10枚も買うはずはなく、みんなわざわざ通販で買うのはめんどくさいだろうから、まとめて買って(まだ代金払ってないけど)売り歩く作戦。
 田中啓文のMCをべつにすると、ちゃんとしたビッグバンドのスタンダードなナンバーの演奏です(後半はヴォーカル入り)。でもSFの人は田中啓文のMCだけ聞いてたりして。アルバムタイトルはMCに合わせて決められているので(?)MCが主役と言えなくもない。まだ数枚残ってるので、大森から手渡しで受けとれる購入希望者はおはやめにご連絡を。

 このCDと同時にアメリカから届いた荷物が、Iraqui Most WANTED Playing Cards。米軍がつくったイラク指名手配犯トランプのオフィシャルなレプリカ。 ポーカー用カードの定番BICYCLEブランドを出してる会社がつくったやつで、愛国グッズ専門店から送られてきた宣伝メールを見て速攻注文。ジョーク商品じゃなくて愛国アイテムです。裏は迷彩柄、表の顔写真は画質の悪さが妙にリアル(顔写真がなくて黒抜きの人も数人)。
 送料のほうが高いからまとめて8個買ったんですが(柳下毅一郎は同じ宣伝メールを見てサイトまで行った癖に、送料が高いからと買うのを見送り、オレが買ったやつを「いやあ、これ、ほしかったんだよね」とお持ち帰り)、ほしがる人に配ってたらあっという間になくなりそうな勢い(田中啓文のCDを買うような人はだいたい欲しがります)。
1000個ぐらいまとめて買って一個1000円で売ればけっこう儲かるかも。お使いものに最適(相手は選ぶけど)。



【5月23日(金)】


 ひとりで落選の連絡を待つのはいやだという浅暮さんに呼ばれて、日本推理作家協会賞選考会の結果待ち宴会@室町砂場(日本橋の蕎麦屋)。
「僕が行ったら受賞しちゃうじゃないすか。それはまずいでしょう」とか放言してたんですが、いろんな人に振られてだれも来てくれないらしいので(ってそれは編集者に声をかけないせいだと思いますが)しかたがない。待機宴会といっても、ほかのメンバーは当の浅暮さんと担当の集英社C塚嬢だけ。なぜそこにオレが?
 まあ、昼下がりに老舗の蕎麦をのんびりすするのもいいか――と思って無理して早起きしたんだけど(ほんとは夕方まで寝てる予定だった)、待てど暮らせど連絡が来ない。選考会スタート時刻に合わせた3時の待機開始から、一時間が過ぎ、二時間が過ぎ、すいていた店内はしだいに混みはじめ、5時をまわるともう満席。
「参ったなあ。このあと映画見にいくつもりやのに」と《ぴあ》かなんかの切り抜きを何度もチェックする浅暮三文。「パレスチアの映画ですわ。一応、参考に見とこう思うてね」
「混んできたからもう今日は解散にしましょうかね。じゃあまた」と大森が腰を浮かしたところへ店の人がやってくる。いいかげんに帰ってくれと文句を言われるのかと思えば、電話の呼び出し。おお、ついに結果発表か。
 担当編集者が電話を受けるために席を立つ。なかなかもどってこない。逃げたか、C塚。
 ようやくもどってきたC嬢、沈痛な面持ちで歩いてくる。そうですか、ダメですか、さあ帰って寝よう。と思った瞬間、作家の方をぽんと叩き、「おめでとう!」と破顔する編集者。ぽかんとする浅暮三文。
「え? ほんまですか? ウソでしょう? またまた。冗談やめてくださいよ。え? ほんまに? あとでウソや言うても返しませんよ! そんな。こういう賞はもうちょっと苦労してからやないと。早すぎるでしょう。こんなで賞もうたら天狗になりまっせ。ああ、どないしょう。そや、ちょっと電話」
 奥さんとお母様に連絡し、さらに伊藤典夫氏と森下一仁氏に電話で報告する浅暮氏。
「あかん。なんか森下先生んとこに電話してるうちに涙が出てきた」と目もとを拭う。
「森下さんはなんて?」
「いや、森下さんは留守で、奥さんに伝言したんですけど」
「…………」

 ひとり静かに盛り上がる受賞者をよそに、短編部門と評論その他の部門の受賞作を確認しようとあちこち電話するが不明。とりあえずタクシーで記者発表会場の第一ホテル東京へ向かう。
「浅暮さん、記者発表では必ず『アッサグレーでえーーす』やってくださいよ」
「そりゃもうやりまっせ、なんぼでも」
「そうそう、浅暮三文を知らん人にも、最初からガツンと印象づけないと」
「練習しとこかな。アッサグレーでえーーす」
「…………」

 ――という約束は果たされなかったものの(授賞パーティで実行すると浅暮再約束)、評論その他の部門受賞の山前譲・新保博久(『幻影の蔵』)両氏と並んだ)受賞者の挨拶はほとんど上方お笑い大賞ノリ。記者の質問にさんざんボケで返してから、
「すんません。慣れてないもんでわかりませんけど、もっと核心を突くような答えのほうがいいですか?」とか。新保さんの挨拶の順番が来てもまだしゃべりつづけ、新保教授が、
「あの、次はワタシの番なんですけどネ」と突っ込むひと幕も。その影響か、山前さん新保さんも必死になってギャグを飛ばすのでたいへんでした。ボケ合戦じゃないんだから。
 しかし、新保さんが仕込んであったらしい「頭がクラクラしてます」というネタは滑り気味。教訓:開口一番、いきなりギャグを言うのはやめましょう。あ、その意味では浅暮さんは正解だったのか。

 浅暮さんがひとりでグレ世界に突入すると記者たちが置いてけぼりになるところだが、隣にすわった逢坂剛理事長が絶妙のフォロー。どうしてファンタジーや幻想小説的な作品が多いのかという質問に、急にまじめな顔になって、
「ぼくはそういう小説ばっかり読んできましたから。カルヴィーノとかバーセルミとかね。そういう作家が好きなんですよ」
 しーんとする会場。あわてた浅暮三文、さらに作家名を追加すればいいだろうと、
「それにバーストかラファティとかスラデックとか……」
 これはまずいとオレが思った瞬間、逢坂理事長が一言、
「ほうほう。なるほど。いやそうですか。あたしはひとりも知りませんがね」で場内は大笑い。完璧でした(ちなみにそのあと逢坂さんは、「翻訳されてるんですか?」ともっともな質問を発したんだけど、浅暮さんは、「あなたが翻訳なさったんですか?」と訊かれたのと勘違いして、とんちんかんな回答を返していたことをC塚嬢の指摘で思い出しました)。
 それ以外にも、質問が途切れてやや気まずい沈黙が広がりかけた瞬間、逢坂理事が、
「浅暮さん、広告代理店にお勤めだったっていうのはどこですか?」と質問し、
「いやもう博報堂に比べたらほんまにちっちゃいとこで」
 となごやかな世間話に持ち込むタイミングもすばらしい。

 選考経過ですが、選考委員を代表した宮部さんの説明によると、『石の中の蜘蛛』と『マレー鉄道の謎』と『少年トレチア』が大接戦を演じ、3作受賞の声も出たらしい。最後は一票差で『トレチア』が涙を呑んだとか。ちなみに第一回投票でいちばん点数が高かったのは『石の中の蜘蛛』だったそうです。しかし大森としては、『ハルビン・カフェ』の圧倒的すばらしさを認める人が少ないのが納得いかない感じ。
 短編では舞城王太郎「ピコーン」がイチ押しだったんだけど、まあ『阿修羅ガール』が三島賞獲ったからいいか。作品的には『阿修羅』より「ピコーン」が上だと思うけどさ。長編部門では候補にならず、短編部門では「犬」が落選した乙一『GOTH』は、先に本格ミステリ大賞のほうを受賞してるし、まあ落ち着き方としては悪くなかったかも。
 SF大賞もそうだけど、推理作家協会賞も重複受賞なしの規定がある以上(一回でもどれかの部門で受賞した人の作品は、二度と協会賞候補にならない)、作品賞というより作家賞的な性格を帯びてくるのは必然かもしれない。

 記者発表後は銀座のDressで打ち上げ。今回は選考会が例年以上に白熱したらしく、ここでもえんえんと候補作に関する議論が戦わされていたのが印象的でした。浅暮さんには受賞祝いに残り少ないイラク指名手配犯トランプをプレゼント。

 そのあとは浅暮さんの引率で、ホームグラウンドだというカントリー・バー《ロッキートップ》で祝勝会。カントリーの生演奏を着物姿で聞く京極夏彦。和服の男性客が入ったのはこの店始まって以来かも(笑)。



【5月24日(土)】


 試写状が来る前にインターネットで席を買ってしまった『マトリックス・リローデッド』先々行ロードショウを見るために(というか、それを口実に観光名所を深夜に見物するために)六本木ヒルズへ。到着は午後11:30。ヴァージンシネマズ六本木チケット売り場は長蛇の列だが、ネット購入分は機械で発券されるので楽勝。
 小浜夫婦と合流してから刊行開始。《TOKYO BROS.》の特集でこの時間に開いてる飲食店がどこにあるのかは予習済みだが、それでも迷います。ヒルサイドってどれよ? みたいな。歩いてるうちに時間がなくなったので、ヴァージンの列に並んでポップコーンとホットドッグ。添野知生が合流したところで場内に入る。定員600人超の7番スクリーンは超巨大。シネコンにこんなでかいスクリーンがあるとはなあ。音響も上々。
 もっとも、すでに一度見てるので、最初の一時間(ザイオン編)はパス。待合室でしばらく本読んで、広場のエージェント・スミス100人アクションから再見。このシーン、最初に見たときはうんざりしたんですが、二度めだと意外に楽しいかも。

 3:30AMに映画が終わり、すぐ下の香港茶楼で食事したあと、早朝半額興行中の52階展望フロアに上がる。ショップは開いてないけどけっこう楽しい。しかし見慣れないビルが増えたなあ。ぱっと見てなんだかわかるランドマークのほうが少ないよ。




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